リレー随筆コーナー
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この連休に家族でスペインを旅しました。マドリッドに入りトレドからラ・マンチャを経て、コルドバ、グラナダ〜バルセロナを回るルートですが、幸運にも全行程が晴天に恵まれる爽やかなツアーとなりました。歴史が息づく街中のレストランでいただくワイン&生ハムにオリーブと、スペインは食べ物が美味しいのも折り紙つきですね! 〜ラ・マンチャ地方〜 |
今回、私の最大の興味はラ・マンチャ地方でした。ミュージカル「ラ・マンチャの男」は現実と物語の区別がつかない老人ドン・キホーテが騎士として従者サンチョ・パンサと世の悪を正す旅物語です。
その道中、出会ったあばずれ女アルドンサを「憧れの麗しき姫、ドルシネア」と思い込み、彼女のために身を捧げる…。一見ばかげたストーリーですが、観劇しますとヒューマニティ溢れる感動の名作です。何度も歌われる「見果てぬ夢」は胸にジーンときます。ラ・マンチャではドン・キホーテが「4本腕の巨人」と信じて突撃した風車のある丘に登りました。
風車が建っている丘は強風にあおられ荒涼としていますが、周囲360度を見渡すと、そこは一面、太陽に輝く黄金色の畑と点々とした人家がどこまでも続き、まさに壮観、生命力のたくましさを感じます。作者セルバンテスが400年前にこの丘に立ったとき、きっと強烈なインスピレーションが湧き上がったに違いないと思うと、一層気持ちが高揚しました。
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〜パブロ・ピカソ美術館〜 | |
バルセロナのパブロ・ピカソ美術館ではピカソ絵画の変遷を見ることができました。15歳頃までのピカソの絵は、教会(初聖体拝受)、花・果物、家具等の静物を題材にした精緻で写実的な絵画でしたが、その後、アカデミズム(伝統的な絵画技術)から脱却し色々な角度から見たモノの形を一つの画面に収めるキュビズム(立体主義)の道を歩み始めたようです。「アヴィニョンの娘たち」は記念すべき最初のキビュズムの作品だとか。たしかに15歳の「初聖体拝受」は「ふぅん、上手だなぁ〜」と感心するのに対し、「アヴィニョンの娘たち」を見たときは「ムムッ、これは何だ!?」とインパクトが強烈です。 |
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初聖体拝受 |
アヴィニョンの娘たち |
遅ればせながら、表現して訴えることは、形を整えた技術的に精巧な作品より、変な形、変な色、変な空間が多角的、立体的に表現された方が強い衝撃だと気付きました。これって、音楽(特に合唱)について私が三十数年間、葛藤してきたテーマに似てないか? 下手な合唱は聴きたくないが、うまい合唱でも感動することは稀ではないか? 何故なんだ? …と。晩年のピカソは、子供のような絵、無為で天真爛漫な線描と造形と色使いを経て、抽象画になります。しかし、抽象画の「泣く女」は、「泣く女」という対象物体をピカソの視点によって解体し再構成して画面に描写したと解説されていましたが、結果的に、「泣く女」を見ると、モデルの内面の感情をより強く感じます。
う〜ん、やっぱり、私が求めている音楽と同じだ! でも、チョット怖い。 〜サグラダ・ファミリア〜 |
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さて、サグラダ・ファミリアの近況報告です。驚いたことに今回は4年前に観たサグラダ・ファミリアとは全く違うものでした。この数年で著しく工事が進捗し、前回は完成まであと50〜60年と言われていましたが今回はあと15年で完成だと。その結果、建物の外観造形の凄さもさることながら、聖堂の中に入るとこれまでに見たどの大聖堂よりも高く、広く、そして明るく、崇高で、色鮮やかで、荘厳で、その巨大な空間には天上を思わせるコラールが流れている、まさにパラダイスの入口です。この世のものとは思えません! 15年後の2031年に必ず再訪問します。 |
〜フラメンコ〜 |
最後に、バルセロナのEL CORDOBESで観たフラメンコの凄まじい情感のタップダンスは、ブロードウェイとは異次元の世界最高水準であることをご紹介して私のリレー随筆を終えます。 バトン相手がみつかりましたら、追ってご連絡いたします。 何卒よろしくお願いいたします。 (2016/6/2) 23期の樋口康之さんが引き受けてくださいましたので、ご報告いたします。 (2016/6/5) ■ ■ ■ ■ ■ |
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