リレー随筆コーナー

高校楽友会第13回定演レコード誕生物語



阿波田 尚(26期・高校13期)



小学生低学年のとき、母に「ベートーベンの運命」ってどんな曲と聞き、母が実家から持ってきたSPレコードを電畜で聴かせてくれたのが、レコードとの初めて出会いだった。

中学生になって、隣の部屋の次兄が、バイトした金でステレオを購入し、隣からLPの音が聞こえる環境となった。テレビのサントリーウィスキーのCMのモーツアルトのピアノ協奏曲第20番第2楽章が、好きな曲となり、お年玉で、この曲のレコードを買いたいといい、次兄にレコード店につれていってもらい、アシュケナージのモーツアルトのピアノ協奏曲第20番を初めて購入した。


モーツアルトのピアノ協奏曲第20番

中学で合唱を始めて、運よく塾高にはいり、高校楽友会に入る。バトンを渡された伊藤俊介先輩(高校11期)はそのとき、3年生の指揮者で同じベースだった。その後、ワグネル男声合唱団・ワグネルOB・高校楽友会OBOGなど40年間に渡り、一緒に歌っています。2年生になり、私は混声指揮者と会計となり、日吉祭など無事に済ませて、3年生。1年生も多数はいり、43名の大所帯となった。

そんな3年生のある日、私は、自分の定演をレコードにしたいと思い、電話帳で調べて、電話をして、運よく、田原町にあるキングレコードの下請けの会社を訪問できた。会社の社長さんから、「ホールの設備で録音したオープンテ―プをトラックごとに編集したものを持ち込めば、LP2枚にできること、ジャケットは高いので、白い封筒にいれた状態であれば、50組発注すれば、1組約3000円で作成してくれる」と教えてもらい、お土産にLP数枚までもらい、帰宅。

私は会計として試算し、“1人3000円で必ず団員が購入して、先生方分は演奏会会計から捻出すればなんとかなる”目途をつけて、団員にレコードの作成の話をして理解してもらう。懸案のオープンテ―プでの録音と編集は、工学部で同じワグネルいた小野真史先輩(高校12期)と白子幸夫先輩(高校12期)にお願いした。

いよいよ1977年3月21日、上野文化会館小ホールでの第13定演本番始まった。
http://i.t-bunka.jp/pamphlets/37194(東京文化会館アーカイブより)

塾歌、第1ステージが私指揮の「千曲川の水上を恋うる歌」・・・全ステージ終わり、最後は岡田先生指揮でアンコールの「青春讃歌」を歌う。当日は、小林亜星さんもいらしていて、舞台裏でお会い、握手してもらったのを今も鮮明に覚えている。そんな時を過ごしていたら、先輩から、「千曲川の水上を恋うる歌」1曲目が録音失敗したので、お客様居なくなったら、この曲だけ再録音するので、集合するように言われる。(実は上野文化会館小ホールの2トラ38CMのオープンデッキが古く、塾歌をとり、ポーズ状態で待機、「千曲川の水上を恋うる歌」が始まるので、解除したら、上手く動かずに1曲目録音できなかったとのことだった)無事再録音もとれ、帰宅、皆は、近藤敏康君(26期・高校13期)の自宅に移動して、演奏会の感動を満喫。

大学生となってから、レコード作製の準備が始まる。

小野さんと白子さんが、2トラ38デッキをなんとか借りて、編集作業したテープを後日もらう。私はレーベルの原稿を自分でデザインして送る。など何とか完了。


レーベル拡大

数か月後、発注したLPが自宅に届く、初めて自分たちの演奏のレコードをワクワクして聞いた。今であれば、デジタル録音機器で録音して、PCで簡単でCDRにできるが、当時は自分の定演をLPに簡単にできないが、なんとそれを実現。(“何かやりたいと思うと、周りの迷惑も気にせず、まわりを巻き込んでそれを実現する”こんなスタイルは、今も変わらないのかもしれない。)オーディオの開発・設計が仕事だった時代もあり、オーディオ趣味は、合唱と同じく40年続いているが、こんな感動があったからかもしれないとも思う。

バトンは兼子伸彦(27期)さんに渡します。よろしくお願いします。(2015年1月24日) 

    


編集部より LPレコード盤をカメラで写してレーベルになんて書いてあるか文字を確認するのは大変です。阿波田君はOlympasカメラでレコードのレーベルを撮影しました。原サイズ(4608×3456ピクセル・300dpi)2.6MBのファイルです。


500×375ピクセル(96dpi)

↑画面をクリックで原サイズの画像が出ます。どんな大きさになるかホームページを見るブラウザー(Internet ExplorerとかGoogle Chromeとか)ではこうなります。

写真1枚(2.6MB)のものすごいこと、びっくりされるでしょう。皆さんのデジカメで撮る写真はこんなファイルなのです。プリンターで写真印刷をするには解像度の高い大きなファイルが必要になりますが、このサイズの写真ファイルですと、A1サイズ(59.4cm×84.1cm)の用紙に印刷するくらいの大きさです。

それで、文字は読めましたか?読めませんでしょ。これだけIT技術が進んでみんながデジタルデータの恩恵を受けるようになってきたのですが、もっと細かい作業をしないとレコードの文字ひとつが読めないのです。

レーベル拡大画像が何とか「青春讃歌」の文字が浮き上がって読めます。これは、私が画像処理を施して文字が読めるように調整したのです。

小さな文字をデジカメで撮影することには限界があります。最近のプリンターにはスキャナーという画像をコピーのように読み取ってデジタル・ファイルにしてくれる機能がついているようになりました。

画像メモリー・サイズを決めているパラメーターは画像の縦横のピクセル数と解像度(1インチ当たりのピクセル数)です。一方、インターネットを見るためのパソコンの画面では1インチ当たりのドット数(ピクセル)はWindowsでは96dpi(dots per inch)、Macでは72dpiです。難しい話ですが、参考のために読んでおいてください。最近のスマートフォンでは、dpiが大きく設計されています。目に映る見掛けの画像の大きさはそれらの組み合わせで決まるという難しいものなのです。

話は飛びますが、昭和30年代の楽友会定期演奏会のメイン曲はLPレコードを作成していた記憶です。フォーレだとかモーツアルトのレクイエムなどがありました。飾り棚を覗いたらこの2枚が出てきました。そのレコード盤をスキャンしてみました。きれいに撮れます。第13回定演のフォーレと第16回のモツレクのレコードです。


420×420ピクセル(96dpi) 136KB


420×420ピクセル(96dpi) 97KB

私の家のスキャナーで読み込んだファイルです。桁違いに小さなファイルとなっていることが分かるでしょうか。それでいてちゃんと字が読めますでしょ?ちなみに2.6MBのファイルは100KBのファイルの26倍のメモリーサイズとなります。Windows95が売り出された20年前は1MBのメモリーが1万円しました。1GBは1000万円でした。

さて、次のバトンは兼子君です。よろしく。(2015/1/24・かっぱ)


FEST