リレー随筆コーナー
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ワーグナーの「ニーベルンゲンの指輪」観劇
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20期の桑田さんからバトンを引き受けました19期の毛利邦明です。 桑田さんとの縁 桑田さんが自分の好きな作曲家はチャイコフスキーと言われたのが印象に残っています。引き継ぎましたリレー随筆は印象深かった昨年の欧州旅行について書かせていただきます。 二度のドイツ駐在と音楽 もともと音楽が好きで、この間、数えきれない程、コンサートやオペラに行きました。いろいろな音楽を聴きましたが、特にワーグナー、リヒャルト・シュトラウスのオペラが好きになりました。ある都市で好きな演目の公演があると出張にかこつけたり、休日を利用したりして毎週末には音楽を聴きに行きました。特にウィーンでは仕事もありましたので何度も行きました。 ワーグナーのオペラは長く退屈な部分もありますが、それを乗り越えた後には必ず報われることになります。ほぼ全部の作品が好きですがトリスタンとイゾルデ、ニュルンベルクのマイスタージンガー、指輪四部作(特に神々のたそがれ)が好きです。 昨年の欧州旅行
旅行は家内、庸子(19期)と行きました。4月3日発で欧州に約3週間滞在しました。訪問したのはウィーン、ライプチッヒ、ドレスデン、プラハで19泊してオペラを8公演、コンサートを2公演聞きました。オペラはライプチッヒでは指輪チクルス、ドレスデンでは魔笛、ウィーンではシュターツオパーでパルシファルとトゥーランドット、フォルクスオパーでフレダーマウスを見ました。コンサートはチェコフィルでベートーベンのピアノ協奏曲他、ライプチッヒのメンデルスゾーンの家で室内楽を聞きました。その間、各地の美術館で名画を鑑賞したりウィーンの森を散策したり充実した旅行でした。また丁度、春先で緑や花々が開花した時期で美しい欧州の春も堪能しました。 ワーグナーのニーベルンゲンの指輪観劇 ただ何といっても目玉はライプチッヒでの指輪チクルスでした。さすがに「指輪」は四夜連続の公演は難しく、4月6日と7日にラインの黄金とヴァルキューレ、4月13日と14日にジークフリートと神々のたそがれを観劇しました。 それぞれ開演は午後5時で演奏時間はラインの黄金が約2時間半、ヴァルキューレとジークフリートが約5時間、神々のたそがれが約5時間半でした。指揮は日本でもお馴染のウルフ・シルマー、オケはライプチッヒ・ゲバントハウスオーケストラでした。主役級の配役は欧州の主要劇場やバイロイト音楽祭で活躍している歌手が揃い全体的に大変充実した公演でした。演奏者、観客が一体となって公演ごとに演奏の質がレベルアップして盛り上っていく様を体験するというのはリングチクルスならではの醍醐味でした。 演出はドラマを分かり易くするためバレーダンサーが劇の内容を踊りで示したり、不要とも思える場面もありましたが、バイロイトのように斬新過ぎず許容できる範囲でした。劇場も1500人程度収容の劇場でしたのでジークフリートのフィナーレの“ジークフリートとブリュンヒルデの二重唱”、神々のたそがれのオーケストラパートの“夜明けとジークフリートのラインへの旅”、“ジークフリートの葬送行進曲”はオケが地響きのようにうねり劇場があたかも一つの楽器のように鳴り響きました。特に神々のたそがれの第三幕の第三場は四部作の最後にふさわしい音楽で、ブリュンヒルデの歌唱とオーケストラによる30分にわたる神々の終焉は、ただただ茫然としてしまうほど凄い演奏でした。最後は神々の象徴であるワルハラ城が炎上しブリュンヒルデの自己犠牲により指輪がライン川に戻され指輪に込められた呪いが浄化されます。また神々も同時に滅びるのですが、“愛の救済の動機”で幕になります。終結部はとても憧れに満ちた晴れやかな音楽で神々が滅びたあと何か新しい世界が始まる予感を抱かされます。 この間、緊張と感動のため身体が硬直して座席にはり付いてしまい身動きができない状況になりました。観客も全チクルスを聞き終えたという達成感に満たされて熱狂的なカーテンコールが長く続きました。興奮冷めやらぬ中、ライトアップされた早春のライプチッヒ市街を通り抜けてホテルに戻りました。(2020/5/20) バトンリレー、同期の佐藤玄君から了解をもらいました。(2020/6/18) ■ ■ ■ ■ ■ |
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