リレー随筆コーナー

クラシック音楽の演奏会を10倍楽しむ


山口浩之(42期)


0.自己紹介
42期山口と申します。44期森本さんからバトンを受け取りました。若い頃(20代)は合唱に明け暮れ、複数の合唱団に所属し、ほぼ毎日練習がある状態でしたが、地方転勤や結婚・子育て等、そこまでの時間が取れなくなってきたので、30代後半頃からは「演奏会を聴く」ことに力を入れ始めました。突然行けなくなっても、演奏する側と違い、聴きに行くのは自分が残念なだけ(チケットが無駄になる)で他人に迷惑がかからないからです。

さて、大層なタイトルを付けてしまいましたが、「私はこのように演奏会とその前後を楽しんでいるので、ご参考までに」という趣旨です。先輩には大変詳しい方々も多く、拙い内容で恐縮ですが、どうかご容赦ください。

なお、タイトルは「プロ野球を10倍楽しく見る方法」(1982)にちなんで付けたものです。

Wiki参照 ⇒ 「プロ野球を10倍楽しく見る方法」

1.コンサート選定
どんなコンサートを選ぶか、については様々な観点があると思います。基本的には聴きたいものを自由に選べば良いわけですが、@曲目、A出演者、Bチケット代金、C会場(場所)、D開催日時などを勘案して選びます。B〜Dは物理的制約ですから、そこは各々の状況次第だとして、@とAについては、「もともと知っている曲目、出演者」ばかりの演奏会よりも、全体のなかでいくつかは知らない曲目や出演者がいる演奏会の方にこそ意外な発見があり、「次回また行こう」という気持になります。


新国立劇場にて

2.チケット購入
20年くらい前までは電話か窓口しか手段がありませんでしたが、近年はインターネットでの購入が主流になってきているように思います。人気公演ともなると発売日当日は電話もネットも繋がりづらい状況になるのは同じです。ここで一つ裏技を。チケットをコンビニ等で代金を支払って引き取る、という流れが一般的(クレカ即時決済除く)ですが、だいたい「○日以内に引き取らない場合はキャンセルになります」と但し書きがついています。逆に言えば、その○日を過ぎたあたりでキャンセル分が再び売り出される、ということが言えます。きっちり〇日の翌朝6時にキャンセル分が再発売される某プレイガイドがあって、発売日に買い損ねた場合には、私はそこを狙っていました。


新国立劇場 舞台側から

3.座席選択
自由席の場合はコンサート当日の選択となりますが、指定席の場合はチケット購入の際に選択することになるので、項番2.の後にこの項目を置きました。

まずは自分の好み(音が良い席が良い、よく見える席が良い)に従って、ということになりますが、クラシック音楽の場合は特に「音が良い」がクセモノで、舞台に近い席で直接音多めで聴きたいのか、少し離れた席で間接音(ホールトーン)も混じった状態を聴きたいのかは、まったく個人の好みの範疇としか言えません。

それを踏まえて各ホールで「音の良い席を」となると、この席ならば絶対に良い音、というものは存在しないのですが、いくつか私なりのポイントを。

まずは編成の大小(1人、10人前後、30人程度、50人、100人以上)、および楽器の音の大きさに注目します。編成が大きいオケや合唱団を1列目などの舞台直近の席で聴いた場合には近くの奏者の音ばかりが聴こえます。また金管や打楽器奏者は前の弦楽器奏者の後ろに隠れるような形となり、何が起きているのか分かりません。なので少し離れた席で聴くのが定石です。逆にチェンバロや弦楽器のソロリサイタルなどは音があまり大きくないので、舞台に近い席で聴くのが良いでしょう。なお声楽リサイタルでは歌手がピアニスト側を気にして正面から下手側を向いて歌う時間が長くなるので(歌手によっては下手側を向きっぱなし)、少し離れた下手側の席を選ぶことにしています。


NHKホール模型


トリフォニーホール 1階正面から


トリフォニーホール 3階バルコニーから

4.事前予習
知らない曲があった場合「予習した方が良い」という考え方と「先入観なく聴いた方が良い」という考え方があるかと思います。これも好みの問題なので、どちらでも良いと思います。しかし、登場人物関係が複雑なオペラなどは予習した方が(あらすじを押さえておく程度)、音楽に集中できる可能性が高まります。ただし音源や録画を聴いて予習すると、予習の音源と実際にこれから聴く演奏(や演出)のイメージが異なる場合があり、そこに違和感を覚えるかも知れません。


Sir ネヴィル・マリナー氏と

5.当日開演前
時間に余裕がある場合は、必ず会場徒歩圏の場所まで移動しておきます。人身事故など交通事情により突然電車が止まってしまうことがあるからです(特に首都圏)。逆に開演に遅れそうな場合もあきらめずに会場に向かいます。開演19時となっている演奏会でも、実際の演奏開始時刻の設定は19:03だったり、19:05だったりすることが多いからです。また演奏会によっては後方の立見スペースなどに途中入場可能な場合もあるので、とにかくあきらめないことが肝要です。

またチケットを忘れた場合でも、特に全席指定券の公演では主催者は購入者および購入座席を把握しているため、入場できる可能性が高いです。


イルジー・ビエロフラーヴェク氏と

6.演奏会
演奏に耳と心を委ねましょう。(笑)
私は浸り切れずに、「この演奏のどこが・どうして良いのか(悪いか)」などを、ついつい考えてしまいます。自分が気に入らない演奏に当たったときに「どこが気に入らないのか」「どうしたら良くなるのか」を考えることで、「今日は時間や金を損した」という気分にならず「ああ勉強になったなぁ」という気持ちになれます。


サルヴァトーレ・リチートラ氏と

7.終演後
速攻で帰宅しても良いですし、友人知人と飲み屋で感想戦、というのも良いと思います。

終演後に演奏者がロビーに出てくるタイプの演奏会もあるので、その場合は項番6.で考えた感想・分析を出演者に伝えてみるのも良いと思います。「渾身の感想」は、トッププロ級の演奏家であっても結構喜ばれます(経験談)。

また、楽屋口で出演者を待つ聴衆もいるようです。もしも実行される場合は、出てくるまでに時間がかかる場合があることを承知のうえ、会場撤収の邪魔にならない範囲で行うことをおすすめします。


37期池田香織さんと

8.事後
感想などを何かにまとめておくと後で思い出すことや、次回以降の演奏会の検討の際に役立ちます。最近では感想をSNS等にアップされる方もいらっしゃるようです。公開範囲等に注意してアップされることをオススメします。なお、SNS上で出演者に感想等(前向きなものに限る)を送ると喜ばれる場合もあります。


43期小林昭裕さんと


50期石井奈央さんと



    


編集部 42期の山口君から原稿が25日に届ききました。みなさん、億劫でコンサートに脚を運ばない方は、どうぞ山口君のアドバイスをお聴きください。

出来たら写真を入れたいと言ってます。待っていましたが未だ届きません。年が明けてしまうので、取りあえず、アップします。届きましたら挿入します。

あと大事なバトンリレーを頼みますよ。(2019/12/25−31・かっぱ)

写真が新年5日に届きました。早速、貼り付けました。バトンタッチはもう少しかかりそうです。

やっとバトンが坂巻正子さん(61期)に渡りました。(2020/6/13・かっぱ)


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