リレー随筆コーナー
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よっさんのエッセー 琴桜と琴欧州 土井承夫(24期) |
毎月、私が発表するこの公民館エッセイ(随筆)も4年目に入りました。然し肝心なテーマに触れていません。私が幼少の頃、倉吉と言えば「横綱琴桜」でした。44年前、東京の学校に入学するため初めて上京した時に4畳半一間・素泊まりの下宿の大家さんに自己紹介する時も「あの琴桜の倉吉です」と言ったら分かってくれました。その大相撲の話を今まで一回もしてこなかったのは 私の不覚であります。 今回はその琴桜・先代佐渡嶽親方の弟子で元大関「琴欧州」、今の鳴戸親方の考え方や行動を通して封建的な縦社会と言われる大相撲の世界について考えます。
琴欧州はヨーロッパジュニアレスリングのチャンピオンだった19歳の時に先代・佐渡が嶽親方(琴桜)にスカウトされて現地の大学を中退し日本にやってきた。だから後がなく頑張るしかなくて入門から史上最速の19場所で大関に昇進し、大関在位も史上4番目の47場所に達し勝率も6割を超えた。だが松鳳山との取り組みで左肩鎖関節脱臼の致命傷を負い31歳で引退となった。 然し。この悔しい経験が34歳で「鳴戸親方」になった時に役立つことになる。 それまでの古い相撲のしきたりでは、親方というのは一段高い座敷の上にじっと座って怖い視線で力士の稽古をにらみ、時折偉そうに叱りつける事で「こわい」「近寄りがたい」というイメージが形成された。また、稽古では「見て盗め」「自分で勉強しろ」というのが昔からの考え方でましてや、若手の稽古で親方が自分の胸を貸すというのはありえなかった。 ところが琴欧州の鳴戸親方は、上記の苦い経験と欧米人の合理的な発想から、まず、
一人一人の人間として育てることが肝要。休み時間に若い力士の悩みを聞いたり、稽古の後、一緒に銭湯の広いお風呂で裸になって弟子と話をしたりしている。 また、スマホで稽古の様子を一人一人撮影して夜それを一人一人に観させて学ばせている。 そして琴欧州の出身国ブルガリアと同じ名前のヨーグルトを売っているM製菓がスポンサーとなっている関係上、冷蔵庫にはいつも同社が一杯のヨーグルトを定期的に差し入れており鳴戸部屋の力士たちはいつもヨーグルトを飲んでいる。ただ、間違ってはいけないのは実際の欧州ブルガリア国はヨーグルトの生産地ではない。 「栄養を考えてたくさん食べる」〜「たくさん稽古」〜「たくさん寝る」これが相撲人生だそうだ。 ・・・角界に新風を巻き起こす、元大関・琴欧州の挑戦は今日もつづく・・・ ■ ■ ■ ■ ■ |
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