リレー随筆コーナー
|
|
音大大学院受験 大学院を受験したのはちょうど去年の今頃。社会人入試枠がないため「声楽実技」に加え「和声」「音楽史」「イタリア語」のレッスンに半年通い4日間に亘る試験に臨みました。愛好家として音楽に慣れ親しんできた身には受験勉強、中でも「和声」は困難を極めましたが、現在ではそれらの知識が音楽作品の理解に必要不可欠であると実感しております。しばしば修了後のことを聞かれますが、何か目的があって入学したというよりは学ぶこと自体が目的と言った方がよいかもしれません。 退職し歌を始める 大学卒業後は一般企業に就職し、その後MBAを取得し通算20年余の会社員生活を送りましたが、いつからか「退職したら歌を始めよう!」と折に触れて思うようになりました。 そんな私は会社を辞めようと決意した年からレッスンに通い始めます。四半世紀ぶりの歌の再開でしたので初めの半年ほどほとんど声らしい声を出すことはできませんでしたが、退職後は「藤原歌劇団」と「日本オペラ協会」というオペラ団体を擁する「日本オペラ振興会」のオペラ歌手育成部の選科という愛好家向けのクラスのオーディションを受け8年にわたりお世話になりました。在籍中ご指導いただいた藤原歌劇団バリトン歌手の中村靖先生は楽友会でご指導いただいた牧野正人先生の大親友で、そのご縁でクラスの特別講義にいらした牧野先生と≪ドン・ジョヴァンニ≫の二重唱 ”La ci darem la mano” をさせて頂いたこともあります。年に3度のアンサンブル、ソロの試験こそありましたが、のびのびと歌うことを満喫し、同じ趣味をもつ仲間と共にローマ近郊で開催されるAmarilli Nizza氏のマスターコースに参加したり、海外のオペラ公演を見に行ったりと楽しい時期でもありました。 その頃に観た舞台で最も印象的だったのは2014年ジェームス・レヴァイン復活のMET公演≪コジ・ファン・トゥッテ≫。何度も見ている演目であるにも拘らずあのような体感を覚えたのは初めてでした。後に現地メディア評に
との記事が掲載されましたが当にその通り。序曲が始まるや否やレヴァインの世界へと誘われたのを今でも鮮明に覚えています。 その後、中村先生の勧めで出場した東京国際声楽コンクールでは声楽愛好者部門3位入賞を果たし、入賞記念ガラコンサートには楽友会時代の先輩、同期の方々にもご来場頂きました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。アマチュアながらオケ伴奏でアリアを歌えたことは何ものにも代え難い経験となりました。
気をよくした私は、もう一歩前進したいと考え「日本オペラ振興会」と並行して音大の別科に通うようになりました。別科では前出の中村先生のご紹介で現在もご指導いただいております河野めぐみ先生とのご縁が生まれ大学院受験へと繋がっていったのです。 学生生活 大学院の授業は率直に言ってかなりハードで、20時以降まで練習があることもしばしばです。実技には「声楽個人レッスン」「オペラ重唱」「オペラ演技指導」そして「バレエ」等があり、私もレオタード姿で20代前半の学生たちと共に踊ります(笑)。動きを止めずにクルクル回る「シェネ」や足を高く上げる「グランバットマン」は大苦戦。オペラ関連の授業では、作曲家、作品、台本、時代背景、登場人物のキャラクターの把握が演奏以上に重要になります。また、座学には「作品研究」「歌劇史」「楽書購読」「文献学研究」「発音法」等があり、例えばイタリア語発音法では毎回の授業でレティタティーボを含む指定のアリア一曲を全て発音記号で書き、演奏時に開口母音、閉口母音、半子音、母音の強勢と長さを正しく表現することに主眼が置かれています。このような授業に参加しつつ、学問として歌を学ぶということを半年たった今でも毎回噛みしめています。 拙文をお読み頂きありがとうございました。 この年になって歌を専門的に学ぶことになったのも何かの「縁」。楽友会HPのリレー随筆執筆要領のページに、
と書かれているのを拝見し、改めて自身がご縁で生かされていることを実感しております。 今後ともよろしくお願い申し上げます。 (2017/10/22) 遅くなりましたが、バトンは31期の細川裕介さんにお渡しいたしました。会社員を続けながら合唱団の指導もなさっています。(2017/10/30) ■ ■ ■ ■ ■ |
|
|