慶應義塾大学混声合唱団楽友会

★第68回定期演奏会★

現役生の定演を観て


河合潤子(32期)


このところ、広報誌の発送作業のお手伝いをするようになって、現役の方々ともお会いする機会が増えました。そのご縁で久しぶりに、12月25日中野ゼロホールにて開催された第68回定期演奏会に伺いました。

毎年、新年会で初々しいハーモニーを楽しませ頂いてますが、現役生の実力はそんなものではありませんでした。正に度肝を抜かれたというのが正直な感想です。

指揮者の横山琢哉先生のプログラム中の寄稿文をお借りすれば、「派手目にみられる大学の中で、よくもこれだけ素朴な人たちが集まるサークルなのだ、」のお言葉通り、飾り気がなく純粋で素直な印象の皆さん。そしてその印象そのままに、春の雪解け水のように清らかで柔らかいハーモニーは本当に心地よく耳に溶け込んできました。

クリスマス当日ということで、第一部から気分があがるクリスマスソングの数々や、難度の高い混声合唱組曲など、個々の合唱への熱いストレートな気持ちが結集した素晴らしい演奏の数々をご披露くださいました。

特に、メインの合唱劇「賢治と嘉内〜銀河鉄道の二人」は、今でも涙が出てくる程の名演でした。重たくなりがちなテーマと難曲を爽やかにそして堂々と演じて歌ってくれました。

宮澤賢治を演じた主演の早水優介君は、もしかすると賢治の生まれ変わりか?はたまた、賢治の魂が憑依したのではなかろうかとさえ思ってしまう程の熱演。同じく早水君のプログラムの解説文を拝読しても、この年齢(2年生!)でこんなに深い洞察のできる人がいることがまず驚きでした。

しかしながらそれ程の熱意や知識を持ちながら決して一人だけが空回りするのではなく、全体との調和の中で主演たる風格を発揮して際立ち、立派に重責をこなしていました。

劇が終わり、肩を下ろしてホッとした時の表情や、舞台の平台の上から元気良くピョンと飛び降りた所作などは、紛れもなく20歳そこそこの若者の無邪気な姿。そのギャップもまた楽しく清々しい印象でした。

他のキャストの皆さんも自然体で素晴らしい演技でした。そこに難解な歌も覚えて歌う訳ですから、そのハードルたるや、我々OBの想像をはるかに越えた高さであることは間違いないでしょう。正に一級の芸術作品でした。

これだけのポテンシャルがある人たちが後輩だということを本当に誇らしく思いました。今回限りの上演ということがとっても惜しい気もしますが、今頃現役生の皆さんは、全てをやりきった充実感と美酒に浸ってらっしゃることでしょう。お疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。

帰路は、宇都宮日美先輩とご一緒して定演の話題で楽しく盛り上がって帰りました。先輩が賢治の生い立ちに大変詳しく、親友保阪嘉内との関係や両親との確執などについてわかりやすく教えてくださったお陰で舞台の背景を知る事ができ、更に理解が深まった事も合わせて書き添えておきます。博学な先輩に感謝致します。

個人的には歌と芝居が好きなので、定演でのシアターピースを是非とも継続して欲しいです。無限大の可能性を秘めた現役生には、ぜひ若いその時しか出来ないことをその時にやって頂きたいと思います。

来年、再来年とまた定演に伺うのが今から楽しみです。

(2019/12/28・31)

    


編集部 25日の定演が無事終わって、Facebookに潤子さんが感激して報告記事が出ていました。すぐに潤子さんに、「楽友に定演レポート書いて欲しい」とメールしました。アッという間に原稿を書き送ってくれました。

その早業は、まさに編集部のかっぱ爺さんに匹敵する速さ。前回の投稿「縁は異なもの」の時も、その速さに喜ばされたものです。

すぐに「文章の一部修正をしたい」との連絡があり、31日に修正原稿が届き、今年最後の記事を掲載になりました。(2019/12/28−31)


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