慶應義塾大学混声合唱団楽友会
第52回「東京六大学混声合唱連盟定期演奏会」を聴いて

舟山 幸夫(8期)


5月2日東京文化会館で開催された「定期演奏会」に大学楽友会現役が出演したので聴きに行ってきました。当日はゴールデンウィークの最中にもかかわらずあの大ホールがほぼ満員、その中で楽友会OB・OGも多数聴きに来ていました。現役を思う楽友会の伝統の表れと改めて絆の強さを感じ取りました。

曲目は團伊玖磨作曲の「筑後川」から4曲。現役指揮者の橋本亜衣さんのスケールの大きな指揮のもとなかなかの熱演でした。実はこの「筑後川」は20年前に三菱合唱団で團伊玖磨さんの国内での練習のあとご本人の指揮で崩壊寸前の東ドイツベルリンの「シャウスピル・ホール」で歌った経験があり懐かしい曲です。


團伊玖磨氏と東ドイツにて,1989

昨年の現役との交歓会で橋本さんから「来年の六連と定演」で演奏するとの話を聞き、奥深くしまいこんだ團先生の練習のビデオと東ドイツでの本番のビデオ(この時は先生自身の編曲によるオーケストラ伴奏)をDVDにコピーして新年会の時に彼女に「参考にしてほしい」とのメッセージをつけて渡した経緯があります。そんなことで当日の印象を指揮者に対する手紙形式で書いてみたいと思います。現役の皆さんの参考になれば幸甚です。


橋本亜衣様
素敵な演奏を有難うございました。懐かしく聞かせていただきました。全体の印象として「六連は定演に向けての途中段階」との印象でした。いくつか気づいた点を列記してみました。参考にしていただければ幸いです。

 

1.何といっても「筑後川」を取り上げてもらったことがうれしいです。最近は、今回の演奏会でもみられたように合唱曲というと信長貴冨・松下耕・木下牧子といった作曲家の曲が主流を占めています。もちろんそれなりに立派な曲も多いのですが、なにかマンネリを感じることが多いのは小生の年齢から来るものでしょうか?今や古典に属してしまった感のある高田三郎・清水脩・中田喜直といった作曲家に加えて團先生も多くの合唱曲を残しておられますが「筑後川」は後世に残る名曲だと思っています。

余談になりますがこの曲を聴くと小生はスメタナの「わが祖国」の中の「モルダウ」を思い出します。山の中の一滴が山の中を通りだんだんと大きな川になって滔々と流れてゆく。その中に川辺での祭りや踊りが表現され最後に大海に注ぐ。良く似ているでしょ?一度聞いてみてください。この話は團先生にもしました。そうした意味から、時間の関係もあったでしょうが、第5曲で締めくくってほしかったと思います。定演を楽しみにしています。

2.次に貴女の指揮ぶり。スケールの大きさの中にも、ち密な表現・的確なアインザッツ。

団員の信頼性を強く感じました。本番はぜひ暗譜で皆をまとめてくださいね。

3.前のステージのH大の演奏は言葉が聞き取りにくかったですが「楽友会」は言葉が鮮明に聞こえました。物語を観客に伝えられたと思います。そんなことから拍手も多かったのではないですか?

4.1曲目と3曲目の出だし。アカペラからピアノ伴奏につなぐのはなかなか難しいですね。アカペラの部分のピッチが合わないとどうしても音程が下がってしまいます。発声法にも問題があるのでしょうか、全員がメロディーを頭に焼き付けこれを合わせるようにしたら改善できると思います。それと1曲目のテンポ。もう少し早くていいのではないですか。終曲はぜひゆったりと!

5.ソプラノはきれいな声でしたね。一方男声がやや迫力に欠けていたように思います。M大まで行かなくてももう少し力強さがほしいと思いました。特に四曲目の「祭り」。見ていても紳士が多くやむを得ない面もありますが、毎年定演で見聞かせてくれる「逞しさ」(歌詞にもありますよね)をぜひ引き出してください。そうすればもっとリズム感も出てくると思います。

6.アルトももう少し歌っていいのかな?

全体として慶早戦は完全に慶應の勝ち。慶明戦は・・・?GHのハーモニーも見事でした。

いずれにしても定演を楽しみにしています。頑張って!(2010/5/2)