過日、当ホームページの随筆欄に一文を投稿したところ、編集者から「故大野君のことを知らない人もいるので、もっと詳しく紹介してほしい」と依頼されました。ちょうど今年は同君の17回忌にあたります。そこで、ここに故人の事績をご紹介しつつ、追悼の意を捧げさせていただくことにしました。
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▼ 大野君は普通部から慶應に入り、高校進学後は音楽愛好会へ入会し、トップ・テナーとして、また学生指揮者として音楽愛好会並びに楽友会合唱団で大活躍した男です。私も彼と同期(9期)の仲間でしたが、彼は学部3年の時、将来プロの指揮者になることを目指し、美学科を休学してドイツのケルンに留学しました。チェリビダッケやサバリッシュといった偉大な指揮者の指導を受け、1年後に帰国しました(従って名簿上は10期となっています)。
▼ 帰国後は團伊玖磨氏の弟子としてオペラ「夕鶴」の下振りや、佐世保市や津市(あるいは四日市市)など地方のオーケストラを指揮する傍ら、「東京バロック アンサンブル(第1回演奏会:61年10月)」や「東京バロック コーラス(以下単に「バロックコーラス」:第1回演奏会:65年6月)」の演奏活動に情熱を注がれました。
▼ 「東京バロック アンサンブル」は、東京バロック協会を母体とし、浦上忠之(9期)君が学生時代にコンサート・マスターとなって発足したグループで、「バロックコーラス」はその2年後に、中村脩(9期)君が責任者となって学部4年の時(63年)に創始した珍しいグループです
▼ 従って、このグループには楽友会9期の仲間が大勢いましたが、やがてそれ以外の友人・知己も加わり、大きな音楽団体に発展しました。ちなみに、65年11月24日に東京文化会館小ホールで開催した演奏会に参加した楽友会員の氏名と、その他の仲間を加えた員数は次の通りでした(当時の氏名による)。
ソプラノ: 林啓子、纐纈礼子、森村真澄、安永いく子(他4名計8名)
アルト: 鳩山満喜子、北川裕子、田尻紘子(他6名計9名)
テノール: 藤田敏夫、金井宏、三沢隆久、津村重人、藤吉憲太郎(他3名計8名)
バス: 安保日出男、市川昭、中村脩、長部正、寺本孝、山内彦太(他2名計8名)
この他にも門野篤子、荒井晴子、川西淳子、遠藤琢雄、福井良太郎、長嶺隼雄の諸氏も参加したことがあります。
▼ この演奏会は「バロックコーラス」にとっての一番大々的な催しで、前田幸市郎氏を客演指揮者に招き、作詞家・野上彰先生の絶大なご協力のもとに同先生の他、金田一春彦、中山知子、藤田圭雄等の諸先生が訳詩された曲を歌いました。
▼ 野上彰先生は、忘れ得ない方です。安永いく子(7期)先輩(通称「へばり」―「ひばり」ではありません!)と親交の厚かった同氏は、大野君をはじめ、われわれ「バロックコーラス」団員一同を非常に可愛がり、特別な訳詩までご提供くださいました。
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