慶應義塾高等学校・女子高等学校の両校楽友会 

3高校合唱サークル「定期演奏会」によせて

慶應義塾高等学校長 藤原 守胤
慶應義塾女子高等学校長 二宮 孝

第6回3高校合同定期演奏会を今宵迎えることとなりました。

一貫教育の過程における普通教育の高等学校として、特殊なある一部の生徒を集めて作った部でもなく、また初心者のみを集めたのでもなく、全くの自由意思に任せて、自ら進んで集まり、学業の余暇をその練習にあてて、ここにその発表会を迎えた次第ですが、音楽活動においては、鑑賞・創作・演奏とありますが、音楽的理解、喜び、これらの貴重な経験は自らの演奏が最高であり、これなくしてより良い、より正しい理解はないともいえましょう。自らの肉体で演奏し、考え、味わうことが大切です。

いずれの団体においても、その活動にいろいろと制約がありますが、高等学校の生徒の音楽会として、ほほえましい、気持の良い会でありますように願っております。

慶應義塾高等学校・楽友会部長  岡田 忠彦
慶應義塾女子高等学校・楽友会部長 渡邉 恵美子

今年もまた3高校合同のコーラス大会の季がめぐってきました。

人生の途上で最も上に向かって伸びる力の旺盛な時期にあるこの生徒さんたちは、この1年間、3校別々の違った場所においてではあっても、懸命にコーラスの技の向上に励んできたことは同じでありましょう。

この事は一に音楽の純粋さを体験するということ、二には大勢が真によいものによって統一されること、三には高い目標に向かって思いきり声をあげること、また四には学生時代にこよない想い出をのこすことなどを意味しています。このことは一人ひとりが自覚している以上に、この人々にとってすばらしい意義があることは確かであり、この人々の幸を心から歓ばずにはいられません。

この若い人々のよき集いにご協力とご理解を惜しまれぬ方々に、心よりの感謝の意を捧げます。

3高校合唱サークル・第1期生 日比野 隆哉(楽友会6期)

「何とかして自分たち若い人が集まって、ハーモニーを創りだしたい」とそんな風に考えてから、もう5年。今年もまた、音楽を創り育てていこうという、何人もの人々がここに集まって、一つずつ丹念に練習を積み重ねてできあがった音楽を、大切にこの会場の中へもって来てくれるということは、何とも嬉しいことです。

無我夢中で開いた第1回の合同演奏会に比べれば、毎年活動も盛んになり、演奏も優れたものになり、その中で音楽と同時に3高校独特の一つの雰囲気というか、活動のバックボーンというようなものができあがってきているように思えます。そして、今後もますますこのサークルの若い意欲的な演奏活動が進められることでしょう。

今夜も3高校の皆さんが心ゆくまで歌う合唱に、いつもは、そんなに短い時間には経験し得ない多くの感動が呼び起こされることと思います。それでは、よい演奏会を期待しています。


「楽友会」の紹介

慶應義塾楽友会は塾の高校生、大学生が相集い、高校・大学の7年間の幅をもった混声合唱団です。その前身である「音楽愛好会」が結成されたのは、昭和231948年のことでした。当時は高等学校生徒のみの男声合唱団でしたが、2年後1950年に女子高等学校が設立されたので、混声合唱団が編成されました。そしてその4年後1952年、大学に進学した会員と現役会員によって、現在のような組織がつくられ、名称も「楽友会」と改められました。

同年、最初の発表会が開かれ、ハイドンのオラトリオ「四季」や「天地創造」からの抜粋曲その他を披露して以来、毎年宗教曲を中心とした定期演奏会を開いております。昨年は第10回を迎え、文京公会堂において、モーツァルトの「レクィエム」を演奏しました。

発足当時60余名であった会員も、1958年から大学生は内部進学者だけではなく、外部からの入学者も入会できるように改めたので急増し、現在では130名の大家族となりました。その内、高校生は約50名おります。

本年度の活動を振り返ってみますと、4月・高等学校及び女子高等学校の各新入生歓迎会出演、5月・楽友会新入会員歓迎会、7月末・合宿、10月・日吉祭参加、12月・第10回定期演奏会、3月・合宿と卒業生送別会そして今日のこの演奏会が1年間の活動の締めくくりとなるわけです。その他、本校の音楽団体の演奏会にも賛助出演しております。

高等学校が日吉、女子高等学校が三田という地理的障害、その上、両校の試験日その他の行事日程の違いによる時間的障害もありますが、私たちは、これらの困難を合唱に対する情熱とお互いの協力によって乗り越え、会をますます発展させていきたいと思っております。


編集部注: 以上の4編は、いずれもここに掲載したタイトル・ページで始まるプログラム(1962/3/31)からの抜粋です。

●日比野隆哉(6期)君の文によると、3高校合唱サークルが始まったのは1956年という事ですが、それがどういう経緯で実現したのか定かではありません。しかしながら、こうして高校楽友会が、混声合唱団発足後6年目にして独自の対外的活動に乗り出し、他校との交流のさきがけとなったのは特筆すべきことでした。指揮者は、他の2校が専門家に依頼していたことに対し、楽友会は伝統的に学生指揮者であったことも注目に値します。

● このプログラムは、第6回の指揮者を務めた伴博資11期君提供によるものです。演奏曲目の詳細は「随筆コーナー」にある同君の寄稿文「信時潔先生との出会い」をご参照ください。(←プログラムをクリックで文字ズーム)
 


クリックで拡大(少々粗いですが懐かしい時代がよみがえります)

●「『楽友会』の紹介」記事を書いた人の氏名は不詳ですが、よくまとまっており、楽友会の歴史と高校生活動の当時61〜62年の状況がよく分かります。ステージ写真を見ると、恐らくその前年のものと思われますが、女声17名、男声は指揮者を加えて20名で合計37名。女声が少数なのは、男子校に比べて生徒総数が約1/9なので致し方ないことで、むしろよくこれだけ集ったものと感心します。第6回の出場人員も、同プログラムに記載された名簿によるとS=11名、A=9名、T=16、B=16合計52名で、男声が女声を圧倒しています。

(2009/2/19オザサ編)