編集後記
学生時代は楽友会、卒業してからOBコールで皆さんと一緒に歌っていたコーラス好きのかっぱが、中年になってからJazz
Vocalの虜になり、すっかりクラシカルな合唱が出来なくなりました。それはDolly
Bakerと沢田靖司という日米のJazz Vocalの大家と知り合い、この2人によって私の発声と歌唱法は作り替えられてしまったからです。さらにはImprovisationという即興的表現法も仕込まれました。譜面通りには歌いません。
楽友会の皆さんには縁の薄いCrooning唱法という発声法が基本です。クルーニング唱法で歌う歌手はCroonerと呼ばれます。
音楽辞典にも「クルーニング唱法」という項目がありますが、マイクロホンで歌うようになってから、ポピュラー歌手は囁くように歌っても声がホールの後ろまで届くようになった。てなことは書いてありますが、技術的にどのように発声するのか、歌うのか何も書いてありません。
20年ほど前に武蔵野音楽大学声楽科出身でジャズ歌手の峰 純子と友達になりました。既に故人となりましたが、彼女の歌は女性では日本一でした。その純子さんが「クルーナーはねェ、何処にも声を当てないで発声するの」と言いました。明快な一言に曇り空が晴れ渡った思いでした。純子さんはすばらしいクルーナーだったのです。一般のジャズ歌手はそういう理屈は知りません。
沢田靖司は「声を飲むな、前へ出せ」「だってマイクが前にあるのだ。声を頭のてっぺんから出してどうする?」と言った。Dolly
Bakerからは、歌う口元を唇の使い方を見せてもらった。そして、盗んだ。英語の発音が下手ではJazzは歌えない。英語をペラペラしゃべる奴はいくらでもいる。が、Singer's
EnglishというのはSpeaking Englishとは違うのです。
というわけで、新年会でも皆さんと一緒に歌えなくなりました。昔の発声をしようとすると何とも苦しいのです。それでOSFでも歌うことはなく、OSFメンバーへの連絡係、「楽友」への広報係をやって来ました。佐々木高General
Managerに「シェナンドーの伴奏をギターでやりたい、カッパはよくギターを弾いていたから1曲だけやろう」という誘いに「よし、頑張って弾いてみましょう」となったのです。これでザザManagerの計画は半分達成、次は「10分の休憩時間の間に2曲ばかりソロヴォーカルで歌え」となりました。まんまと落とされました。
しかし、何十年もギターを弾いていないので指先はふわふわで、指で弦を押さえる力もありません。つたない伴奏でごめんなさい。むかしは上手だったのにね。
でも、貴重な場面で歌わせてイタダキ感謝しています。実にいい気持でした。まり子さんも普段弾いていないジャンルの伴奏で苦労を掛けました。有難うございました。舞台の袖に帰ると、まり子さんのお父様は「すごくよかった」と喜んでくれました。
今はドクターストップでOSFで歌えなくなったN先輩が翌日にメールをくれました。
「男が真剣になる時は、〈遊び〉の時と事が起こった時だ」という一文を以前読んだ事がありますが、昨日の貴兄は将にそれで、歌っている時に一瞬、真剣な貴兄を垣間見た時、それは将に、貴兄にとっては、〈遊び〉である事を感じました。 実に素晴らしかったですよ。有難うございました。
なんとも温かい気持ちになりました。こうしてOSFの先輩方に大事にされてかっぱは幸せ者です。(2016/11/15・OSF広報わかやま)
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