リレー随筆コーナー

声楽コンクール奮戦記



辻井  渉(27期)



素人の腕試し、50代の記念に声楽コンクールに初挑戦してみました。出場したのは第25回日本クラシック音楽コンクールの声楽部門一般男子の部です。このコンクールは一般にはクラコンと呼ばれており、課題曲は無く10分以内のクラシック曲であれば何を何曲歌ってもよいので、誰でも比較的出場しやすいコンクールと言われています。都道府県毎の予選、本選があり、通過できれば東京で全国大会です。

私はヴェルディのオペラ「シモンボッカネグラ」のBassのアリアを歌い、運よく東京都予選、本選に合格し、全国大会に出場することができました。残念ながら入賞することはできませんでしたが、以下その全国大会の模様をご紹介しましょう。

声楽部門一般男子の部は大学卒業以上が対象で、全国大会出場者は17人でした。そのうち約2/3は音大の大学院生等の若手、あとの1/3は中高年の声楽愛好家と思しき人達です。若手にしてみればここで入賞して、将来のプロをめざして箔をつけたいと思って参加しているでしょうから、「何の因果でこんなおっさんたちと競わなければならないんだ」と思っていたかもしれませんね。

さて楽屋は伴奏ピアニストの女性も含め1か所のみがあてがわれ、皆カーテンで仕切った試着室みたいなところで着替えます。発声練習をする場所はありませんので、会場に来る前に声を作っておかなければなりません。本番前の楽屋はちょっと声出ししたり、楽譜を確認したり、ピアニストと打ち合わせたり緊迫した雰囲気です。余談ですが伴奏ピアニストの女性が何故か美人揃いで、出演者に「どういうご関係ですか」と聞きたかったのですが、そんなことを聞くと張り倒されそうな雰囲気だったのでやめておきました。

本番は公開演奏なのですが、客席には5名の審査員と関係者以外一般客は殆どおらず、さながら音大の期末試験のようだとの声もあります。さすがに全国大会ともなると猛者揃いで、演奏は皆甲乙付けがたい。その中で今回の最高位は何と69歳のBassのお医者さんで、「ドンカルロ」のアリアは実に情感豊かでした。若手はパワーがあり、きっちりと歌いますが、こういう味のある歌唱はできません。歌には年輪が如実に現れます。こういう人を今後の目標にしたいと思いました。

ただこの道は如何せんお金がかかります。このコンクールだけでも予選、本選、全国大会と出場すれば参加費だけで5万円以上、これにピアニスト謝礼その他がかかります。その意味では老後の趣味としてはいかがなものかと・・・。

適当な写真がありませんので、殺風景な原稿ですがご容赦下さい。次は26期の山根弓子さんにバトンをお渡しします。

(2016/1/7)

    


編集部 年明け第1号の原稿が届きました。全国大会に出場とはすごい経験です。昨年から好調なバトンリレーが続いています。編集部は左グラスです。

みなさんの自由投稿も大歓迎です。(2016/1/7・かっぱ)


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