リレー随筆コーナー

37周年を迎えた小児病棟のボランティア活動

 

奈須 輝美(5期)



奈須輝美さん(5期)

「おはようございます。今日は、どのお子さんの所へ行きましょうか?」とナースセンターで挨拶し、日赤医療センター・小児病棟で私達のボランティア活動が始まります。

親御さんがまだ来ないので、寂しくて泣いている幼児や赤ちゃんを抱っこしたり、おもちゃで遊んだり、本を読んだりします。また、学習を希望する学童には学習指導をします。昼食が始まると介助をしたり、ミルクを飲ませたりしてあげます。ひな祭りなどの行事のお手伝いもしています。こんな活動を私は37年続けています。

こんなふうに始まりました。

1970年、私は、3人の子供がそれぞれ8、5、2歳の時、PIE症候群(肺好酸球多増症:ステロイド・ホルモンによる治療が必要な肺炎)を発病したので、長年通院・入院を繰り返すことになりました。
 

診察を受けるまで3時間程待つので、この時間の有意義な過し方を考え、入院中の学童の学習指導のボランティア活動を思いつきました。私の主治医から、川崎病の発見者で、当時の小児科部長・川崎富作先生をご紹介いただき、1974年6月から友人と2人で週1回の活動を始めました。と同時に出身校の中等部、女子高、大学の同窓会誌で同志を募りました。

当初は、なかなかメンバーが安定せず1人になってしまったこともありましたが、細々と続けていたところ徐々にメンバーが増え、長期に活動する人も増え、週1回の活動が2回、3回になり、グループ結成20周年を迎えたときには、日曜日、祝日を除く毎日の活動できるようになりました。

この活動を長年支援してくださっていた東京都済生会中央病院の、当時の副院長先生のご紹介で、当院の小児病棟と整形外科病棟、神経内科病棟でも1992年3月から活動を始めました。3年後からはほとんどの成人病棟で、歩行の困難の方に代わって院内の売店に買い物に行ったり、昼食の配膳・下膳、昼食の介助、話し相手などもしたりしています。
 

更に、1997年には東京都立広尾病院の小児病棟 からも依頼され、以来、その活動も続けるようになりました。こうして現在3病院で「なすグループ」と呼ばれるボランティア活動が続いていますが、そのメンバーは全員で約50名になりました。家庭の主婦が中心で、会社員、学生もおり、その中には33年も続けてくださった男性の元小学校の先生もいらっしゃいます。

1992年から始めさせていただいた賛助会員の方々のご支援も永く続き、現在も約120名の方々がご支援をしてくださっています。

3病院で患者さん、親御さん、ドクター、ナースの方々が、私たちのボランティア活動を快く受け入れてくださっています。ボランティアの人たちは、皆、仲良く助け合って楽しく活動し「すてきな友人ができた」と喜んでいます。これからも、事故の起きないように気をつけ、皆様に喜んでいただける活動を永く続けていけるように努力してまいります。(2011/5月1日)


編集部追記: 
奈須さんからこの原稿が届いた際、楽友三田会の先輩もこの貴重な活動の仲間に加わっておられる、と聞きました。「それはすばらしい。ついでと云っちゃ失礼だが、その話も公開してよ」とお願いしたら「では・・・」といって送られてきたのが、次の文です。これは「なすグループ」発行の「なす通信」第21号(06年12月発行)に掲載された一文ですが、筆者のご了解を得て転載させていただきます。筆者は野辺地 きみ子(2期)さんです。

    

実は私、奈須さんの先輩なんです(学校と合唱団ですが・・・)。以前から交友誌などで、奈須さんがボランティア活動をされていたことは知っていました。「若いのにがんばっているなぁ」と感心していたのです。

昨年(05年)、これまでの仕事が一段落し、時間に余裕ができた頃、あるパーティーの席で奈須さんにお会いしたのです。私もボランティアに興味があったので「一度見学に行ってもよい?」とお聞きしたら「どうぞ、どうぞ」というお返事でした。そこで後日、広尾病院に見学のつもりで出かけたところ、その日にすぐお手伝いすることに。そのうえ皆さんとお昼をご一緒にいただき、おしゃべりをするうち、いつの間にか、金曜のグループでお手伝いをさせて頂くことになったのです。

このグループで活動を始めたのは4月、広尾病院の桜がもう咲くかという頃でした。金曜のグループの皆さんはベテランぞろいで、私が泣きわめく子を抱っこしたり、口のきけない子の食事介助にオロオロしていたりすると、必ず誰かがスッと助けに来てくれます。病院の方針など必要なこともきちっと教えてくださったので、子供たちにも自然に接することができました。これからも秋祭り、ハロウィン、クリスマス等、色々な病院主催のイベントが予定されており楽しみです。

活動が終わっての帰り道「あぁ、おなかすいたぁ」と言いあえるうちとけた雰囲気の中、私はもうこの方たちと長い間一緒に過ごしてきた感じがします。でも、考えてみたら、まだ1年にもなっていないのに(大きな顔をして・・・)。
私の出発は桜の春でした。(06年11月)