リレー随筆コーナー

暦(れき)と干支(えと)とテト


末続 靖(12期)


「楽友」の皆さま
コロナ禍の中、どのようにお正月をお迎えになりましたでしょうか?
小生は、我が家には一歳半の孫が居りますので、間違ってもウィルスを家に持ち込む事の無いように、ひたすら自宅で、「自粛」ならぬ「爺粛」に努めています。
今回は、「お正月」に類する話題を、「楽友」に投稿いたします。

T 旧暦と旧正月
歴史の中ではたくさんの暦法(こよみの計算の規則)が使われてきましたが、日本では、太陽暦への改暦の直前に使われていた「天保暦」と呼ばれる暦法のことを、一般には「旧暦」と呼んでいます。

旧暦では、月が新月になる日を月の初めとし、各月の1日としました。それから翌日を2日、その次の日を3日と数えたのです。そして、次の新月の日がやってくると、それを次の月の1日としました。

旧暦1月1日は、通常雨水(2月19日ごろ)の直前の朔(さく)日であり、1月21日ごろから2月20日ごろまでの間を毎年移動します。

雨水は、二十四節気(にじゅうしせっき)(=1太陽年を日数(平気法)あるいは太陽の黄道上の視位置(定気法)によって24等分し、その分割点を含む日に季節を表す名称を付したもの)の第2番目で、旧暦1月1日は、通常この雨水の直前の朔(さく)日《朔(さく、英語:new moon)=月と太陽の視黄経が等しくなること、また、その時刻のこと。現代的な定義での新月(しんげつ)》です。

暦月の初めの日を決定する規則には平朔と定朔とがあり、これによって朔日となる暦日に違いが生じることがあります。

朔は世界中で同時に発生しますが、時差があるため朔日は世界中で同日ではなく、1月21日ごろから2月20日ごろまでを毎年移動します。最近は、
  2019年では 2月05日
  2020年では 1月25日
  2021年では 2月12日
といった具合です。

新月から新月までは平均して約29.5日の間隔ですので、12ヶ月間では約29.5日×12ヶ月=約354日であり、太陽暦の1年より約11日短いため、そのままではだんだんと季節とずれていってしまいます。そこで太陰暦では、暦と季節のずれが大きくなってきて、ひと月分に近くなると、閏(うるう)月というものを入れて、ずれを修正します。閏月は平均すると19年に7回ぐらいの割合で入ります。

各国の旧暦は基本的にはほとんど同じですが、標準時が異なるため、時差により朔や節気の日付がずれ、同じ日の日付が1日またはひと月ずれることがあります。

ベトナムの旧暦は中国暦とほぼ同じですが、ベトナム標準時(UTC+7)を使うため、日付が異なることがあります。なお、旧正月が国の休日となっているのは、中国・韓国・北朝鮮・ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドネシア・ブルネイとモンゴルなどです。

太陰暦で8月15日の夕方に出る月は、中秋の名月と呼ばれます。単に十五夜といった場合も、中秋の名月をさすことが多いのです。

8月15日は、秋(7,8,9月)の真ん中なので、それで中秋と呼ばれるのです。
2020年の中秋の名月は、10月1日でした。

この中秋の名月をめでる習慣は、平安時代に中国から伝わったといわれています。

U 干支(えと)
12の動物による干支の順番は、神様が催したレースの先着順、という伝承があります。しかしもう少し細かく見てみると、そこに意外と知らなかった事もあるようです。

「干支を決めるレース」
十二支の伝承では、
「神様が『干支を決めるレースをやるぞ〜』と言いました。牛は足が遅いので、前日にスタートしました。牛の頭か背中の上にネズミが乗っています。牛がゴールする寸前、ネズミが牛を出し抜いて、先にゴールします。ネズミは猫に対して『スタートは後日になったから』とウソをつき、猫がゴールしたのは13番目でした」

さらに多少怪しげですが、レースを催した神様は、「神様」ではなく、「天帝(後に釈迦に変化)」ということらしいです。干支の起源は中国に遡るらしいので、たしかに「神様」というよりはこの方がしっくり来ます。

猫と牛と、仲間を二匹も騙したネズミはそれ以来、皆の嫌われ者になりました。ネズミに騙されて一日遅れ、十二支に入れなかった猫は怒って、それ以来ネズミを追いかけるようになりました。

犬と猿についても、「酉(鶏)が戌(犬)と申(猿)の間になったのは、犬猿の仲とも言われる両者を仲裁する為に間に入った」という話です。

又、「『蛇(巳)』と『辰』は同時に神様の門の前に着きました。蛇と辰は同じ仲間なのだけれど、辰は修行を積んで空をも飛べる力をも身に付けていて、蛇は辰の力を認めていたので、『辰様、お先にどうぞ』と一歩譲った。で、『辰』『巳』の順になった」そうです。

なお、日本とベトナムでは干支に違いが有り、「日本の“牛”はベトナムでは“水牛”」に、「“兎”は“猫”」に、「“羊“は”山羊“」に、「猪は豚」になっています。下がその比較表です。

      

V テト
ベトナムでは旧正月のことを「テト」と呼びます。テトの期間は1週間程度で、この間会社やお店などが完全に休みになり、ベトナム人はみんな彼らの実家に帰り、家族との時間を過ごします。ただ、テトの間は、街中のレストランもスーパーも全部閉まってしまいますので、単身赴任者は日頃の食事にも困ることになります。たまに開いているレストランがあっても、メニューの値段は、いつもの数倍以上になってしまいます。

ハノイでも開いていたのは、アメリカンクラブのレストラン位だったでしょうか。

ベトナムでは桃や梅の花がめでたいものであるとされています。 そのため町中に桃や梅の花が飾られます。

ベトナム戦争時では、テト(旧正月)に自発的な短期休戦が成立していて、これを「テト休戦」と呼びました。

 

テトの時に食べる「粽(ちまき)」と街で見かける「麒麟舞い(日本でいう獅子舞い)」の写真をご覧下さい。

最後に
近年ではテト行事を簡略化する傾向がありますが、ベトナム人にとってテトは、今でも特別な意味を持っています。皆様もテトの間ベトナムで過ごし、テトを経験されれば、ベトナムとの距離感もより一層縮まることでしょう(ただ、現在は日本でのコロナの感染拡大により、ベトナムへの入国は厳しく制限されていますので、その点ご注意ください)。

(2021/2/10)

    


編集部 SUEは「テトに掲載したらどうだろう」と。ベトナム首相は、2021年は旧暦の正月(2月12日)を含む2月10日〜16日の7日間を「テト連休」 に決めました。

SUEは毎年テト連休には、帰国して来ました。そして、時期が合うと楽友三田会の新年会に出られたのです。

因みに中国での春節連休は、2月11日〜17日だそうです。

校正係の久保ちゃんから、「タイには象があり十三支?」とか・・・調べると・・・
日本  ⇒ 鼠 牛 虎 兎 龍 蛇 馬  羊  猿 鶏 犬 猪

タイ   ⇒ 鼠 牛 虎 兎 龍 蛇 馬 山羊 猿 鶏 犬 
北タイ ⇒ 鼠 牛 虎 兎 龍 蛇 馬 山羊 猿 鶏 犬 

という資料が出て来た。それで、「タイは十三支」と言った人がいるらしい。

(2021/2/10・かっぱ)


FEST