リレー随筆コーナー

コーラスと私


野村 豊(高8期)


高校楽友会時代の思い出として最初に思い出すのは女子高の木造の音楽室である。目の前に日本庭園があり、夏休みや冬休みなどの長い休み中の練習は、日吉の塾高の音楽室ではなく可能な限り女子校の音楽室を使わせてもらった。時々すぐ近くの教室からアイリッシュハープの美しい音色が聞こえてきたのもよく覚えている。今でも女子校の裏の道を歩くことが時々あるが、三の橋側の校門の内側には庭園が残っている。校舎は変わってしまったが、当時の木造の音楽室が目に浮かぶ。

3年生の定期演奏会前の合宿で夜騒ぎ、「定期演奏会は中止だ」と岡田先生の大きな雷が落ちたのも懐かしい思い出である。幸い定期演奏会を行うことはできたが、それまで岡田先生に叱られた経験がなかったので私たちにはショックだった。私が高校楽友会に在籍した3年間は岡田先生に指導していただいたことが少なく、今から思うと少々寂しく残念である。

大学ではコールムジという学外の合唱団に所属した。コールムジは、慶應高校で三年間音楽の先生をされた安島洋一先生(国立音楽大学教育音楽学科卒業)と、高校楽友会5期の男子が中心になって作った合唱団である。安島先生は高校楽友会の第5回と第6回の定期演奏会で指揮をされている。コールムジの女子は国立音楽大学教育音楽学科の人が多く、声楽科、ピアノ科の人もいた。高校楽友会の5期〜7期の男子はほとんどがコールムジに所属していたので、8期のわれわれもコールムジに入ることになった。

大学時代、夏に行われていた国立音楽大学の合唱講座にはよく参加した。「信濃の秋」や「千曲川の水上を戀ふる歌」の作曲者である小山章三先生を中心とした、国立音楽大学教育音楽学科の先生方に指導していただいた。参加者は200人くらいいたが、8割〜9割は小中学校の音楽の先生方であった。多くの合唱曲を初見で歌っていくので読譜力が鍛えられた。また、子供たちが生活のいろいろな場面で歌える輪唱を何曲も覚えることができた。後に小学校の教育実習や中学校の教員になってから役に立った。小山章三先生の恩師である岡本敏明先生は、戦後の音楽教育に大きな貢献をされた人物で、岡田先生も国立音楽大学時代に薫陶を受けたそうである。

大学を卒業する頃、今まで一緒に歌ってきた仲間に声をかけ、「みんなでつくるコンサート」を開いた。高校楽友会の時の仲間、コールムジで歌ってきた仲間の他、それぞれのメンバーの友人も参加して、「みんなでつくりあげよう」という趣旨で行った。合唱だけでなく、クラシックギターや、バンド演奏など、さまざまな演奏を含めて行った。その後、数回このコンサートを行い、だんだん高校楽友会の後輩の参加者が多くなった。3回目の「みんなでつくるコンサート」の時、私は仕事の関係でどうしても本番当日の参加ができなくなってしまった。その時、「僕たちがやりますよ」と言ってくれたのが高校13期の阿波田尚君である。その後、私は仕事が忙しくなってこのコンサートができなくなってしまったが、阿波田君たちが中心となり、高校楽友会のOB会のようになって、たびたびコンサートが開かれている。ありがたいことである。

私は一昨年中等部を退職したが、コーラス部の部長(顧問)を20年くらい担当した(教科は社会科だが)。コーラス部は部員が少なく苦労したが、少人数でも楽しく歌える歌集がないかいろいろ探した。そこで見つけたのが、源田俊一郎さんが編曲した「コーラスをはじめた人のための二部合唱曲集」である。さまざまなジャンルの曲があり、どれも歌いやすく、伴奏も弾きやすい。2部合唱だからといってバカにできない。ここにはハモることの原点がある。この歌集は1〜6まで出版されているが、どれも生徒から愛され愛唱歌として現在まで歌い継がれている。9月の中等部同窓会の日にはコーラス部OB,OGが集まるが、この歌集のおかげで20歳くらい年齢が離れた卒業生でも一緒に歌える。最近では12月にコーラス部同窓会忘年会も毎年行われるようになったが、私も一緒に歌わせてもらっている。この随筆を書いていて気がついたのだが、源田俊一郎さんも「くにたち」の教育音楽学科卒業であった。源田さん編曲の「混声合唱のための唱歌メドレー ふるさとの四季」の楽譜(カワイ出版)に、小山章三先生が文章を寄せている。

今年の1月19日(日)に幼稚舎の自尊館で第40回四校ジョイントコンサートが行われた。幼稚舎、普通部、中等部、湘南藤沢中等部の音楽系クラブが参加する。コーラス部の3年生はこれが最後の発表の場になる。今回指揮をしてくれたのは、コーチの眞田修平君(62期)である。眞田君は、中等部でコーラス部、高校は湘南藤沢高等部で合唱部、大学では楽友会で指揮者を務めた。2016年4月10日の日吉協生館藤原洋記念ホールで行われた岡田忠彦先生を偲ぶ会でも「塾歌」と、「鎮魂の賦」より「春の日」の指揮をしている。また、岡田先生を偲ぶ会で「鎮魂の賦」より「春の日」のピアノ伴奏をしてくれた鈴木美智子さんは、長年中等部コーラス部でピアノ伴奏をしてくださった私の中等部時代の後輩である。

ジョイントコンサートでコーラス部が歌い終わった後、「心にしみる歌声ですね」と幼稚舎の音楽の先生に褒めていただいたことが嬉しかった。

今回この随筆を書かせてもらい、驚くほどいろいろな人の結びつきがあったことに気がついた。これまでお世話になった皆様に改めてお礼を申し上げたい。ありがとうございました。

(2020/1/31)

    


編集部 2020年1月が終わろうとして居ます。野村 豊さんからのメールが届いています。リレー随筆の件がどこかに飛んで行って「あれ、何か用が・・」と思ってメールを開いた次第です。

高校楽友会関連の行事では顔を合わせるわけですが、初めて会って話したのが、わたしの2女の結婚式だったのです。2女が中等部1年生の時の担任だったのです。私は保護者会には出たことがありませんから、その日に初めて挨拶を交わしたという訳です。不思議な縁です。

バトンは、路川昌子さん(22期、高校9期)に渡りました。(2020/1/31・かっぱ)

いい写真を使っていただきありがとうございました。
自分をふり返る良い機会になりました。

雅生君と栄子ちゃんが1年B組にいたころがなつかしく思い出されます。
私が中等部で担任をした最初のクラスでした。
本当に不思議なご縁ですね。 (2020/2/1・野村)


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