リレー随筆コーナー

よっさんのエッセー

女子バレーボール日本代表監督 中田 久美さんのお話

〜 心は、折れてなんぼ 〜


土井承夫24期


女子バレー全日本監督の中田久美さんは昭和40年生まれの現在53歳。14歳であの山田重雄監督の英才バレーボールチームに入り翌年史上最年少の15歳で全日本代表に選ばれた。そして中田はそのまた翌年の昭和56年に日立に入社し名セッターとして名を馳せた。私は昭和54年に会社(日立金属)に入社したので中田だけでなく大林や吉原、多治見の名前を聴くと懐かしい。まさに当時は日立バレー全盛の時代だった。鳥取県の中学校間で日立金属杯の大会があったり、お隣りの島根県安来市にある安来工場の女子バレー部が強いのもそういった流れから来るのだろう。

 

しかし、90年代に入って国際的な価格競争が激しくなると一企業がバレー部をまる抱えする事の負担が増大しやがて部解散に追い込まれる。中田もその時期に退社した。その前後に右膝じん帯断裂の大けがをし再起不能とまで言われたり私生活でもセミヌード写真集が話題を集めたり夫婦間のすれ違いから離婚も経験した。現在は独身である。また、テレビのニュース番組でコメンテイターもやったがある時「すぽると」の番組中、女子選手たちに「てめえら、この 野郎!!」と大声で怒鳴り散らして顰蹙(ひんしゅく)を買ったが、結果的にそれが女子選手たちの気を引き締めて良い結果に繋がり、後日、日本バレーボール協会から感謝の言葉を貰う事になる。そして41歳の時、父が癌を宣告されて死の淵にあった時、その父の「俺の人生に悔いはない」と言ったその言葉が胸に突き刺さり、自分も最後は「悔いはない」と言えるように頑張りたいと決意した。こういう沢山のプラスマイナスの経験が今の彼女の前向きな生き方の裏付けになっている。そして、こうも語る

「心は、折れてなんぼ」

その折れる心をどう取り戻すかを考えるのが大切。折れたままの現状に満足してはいけない。そこからどうやって戻すか、それを他人の優しい言葉や慰めに頼ってはいけない。最後は自分で考え自分で決めるのだと・・・・・来年の東京オリンピックでの中田ジャパンの金メダルを期待したい。

(2019/8/3)

    


編集部 例年より梅雨の明けるのが遅く、台風6号と共に関東地方も真夏になりました。8月の館長報告の中にあったヨッさんのエッセーです。投稿本体は ⇒ こちら

(2019/8/3・かっぱ)


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