リレー随筆コーナー

八八競技

 

渡辺有里香(37期)


話題を探しながら年を越し、あっという間にもう春だ。
お正月におせちを食べ、節分でお豆を投げて食べ、お雛祭りでちらし寿司を食べ、次は子どもの節句にまたちらし寿司を食べるが、我が家(未だ実家)では食べること以外に楽しみはないのかと思って思い返すと、唯一、これは!と思い当たるものがあった。お正月に不可欠な遊び、「八八(はちはち)」。これを紹介しすることにした。

「八八」は花札を使ったゲームである。遊び方は単純で(本格的にはもっと複雑なルールがあり、ローカルルールも多いと思うが)、場に出ている札と同じ種類の手札を合わせて取り、札にはそれぞれ点数があるので、たくさん点数を取った者が勝ちである。場に出ている札がなくなったら一回戦が終了で点数を計算する。これを「一月(ひとつき)」とし、12回戦、つまり十二ヶ月(一年と言う)やって、最終的な勝ち負けが決定する。一年やると相当スピーディーにやっても約1時間かかるので、「半年(6回)だけやろう」ということもある。ただし、3人でしかできない。6人までエントリーできるが、実際にその月にゲームするかしないかは親から順に決める。配られた手札が悪ければ降り賃を払って降りることができる。

やり方は単純だが、私たちを惹きつけてやまない特徴がいくつかある。

お道具がかわいい


写真1 お道具一式


写真2:目が飛び出る

点数を数える白と黒の碁石(直径1センチくらい)と札(1センチ×2センチくらい)、それを入れるカゴ(エントリーしている人はみなこれを持つ)、点数が2倍になる場合に目印にする軍配、借金をしている時目印としてカゴに入れておくだるま(写真2:目が飛び出る)、など。 写真は任天堂の道具一式。八八以外の遊びにも使える道具が入っているが、どう遊ぶかは不明。もう手に入らないと思っていたが、最近は中古をネットで手に入れることができそうである。我が家では手が汚れる物を食べながらの参加はご法度であり、災害時に持ち出すべき家財道具の一つになっている。

役がたくさんある
最初に持つ、配り終えたばかりの手札にも役があることがあり、ゲーム中にできてその回が強制終了となる役があり、ゲーム終了後に取った札の中でできる役がある。役は非常に高い点数をもらえるので、可能性があればもちろん狙うが、全くの偶然でできる場合もある。ちなみに八八には猪鹿蝶という役はない。

頭の体操になる
毎回点数計算が必要だが、88点を境に何点勝ったか負けたかで精算を行う。暗算で素早くやる。
また、取った札は公開して場に並べるが、役ができそうな人がいたら残りの二人で何とか阻止しなければならない。私利私欲に走って、相手がどのような状況にいるかを把握できないようではダメなのである。泣く泣く高い点数の札を手放さなければならないことも要求される。このやり取りが八八の面白いところである。

以上のように八八は単純でありながら、緻密なゲームである。特にお正月にやるゲームというわけではないのだろうが、あまり食事の支度や明日の予定を考えながらやれるようなものでもない。ということで、我が家ではお正月に特別感を持って遊ぶものとなっている。
中学生の甥も小学生の姪もすっかりマスターし、この遊びを伝えていくことができるだろうと嬉しく思っている。そして、花札の話題が出てもこの「八八」の遊び方を知っている方にまだ会ったことはないので、ぜひお会いして盛り上がりたいと思っている。

卒業してから歌の仕事の現場で知り合い、一度飲んでみたら何とも懐かしい雰囲気を醸し出していて、個人的にはもっと親しくなりたいと思っている小林昭裕さん(43期)からバトンを譲り受けました。

次のバトンは、最近再会した後輩の井伊さん(40期)にお願いしました。

(2018/3/10)

    


編集部 2月が終わったらと思っていたら、3月も10日です。すぐに新学年になります。渡辺有里香さん(37期)から原稿が届きました。今時めずらしい花札遊びがテーマです。

どのくらい珍しいのかお教えしましょう。20世紀後半の学生たちの遊びは「麻雀」でした。各大学の周りには「雀荘」と呼ばれる「麻雀遊技場」が沢山ありました。日吉にも三田にも、楽友会の練習後は「雀荘」に入り浸る学生が大勢いたと思います。2000年以降、学生相手の雀荘はなくなりました。

そんな麻雀育ちの親たち世代の座敷遊び(賭博)に花札がありました。今ではゲーム機の任天堂が「花札」専門の製造販売会社でした。日本式トランプと言えばよろしいかと思います。一番シンプルなゲームは「おいちょかぶ」とか「こいこい」でしょう。(2018/3/10・かっぱ)


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