Editor's note 2020/3


Johnny Hartman(1923-1983)

 低音の魅力と呼ばれる歌手は東西にいます。

♪フランク永井は低音の魅力・・・

と歌われたのを憶えていますか?

私が好きなバリトン・ヴォイスにJohnny Hartmanがいます。バリトンの歌声はソフトで甘く、北極の氷も融かしてしまうような、人の心にしみ込む歌声なのです。
 

クリント・イーストウッドの製作した映画「マジソン郡の橋(1995)」のサウンドトラックに彼のいくつかの歌が挿入されましたが、今となっては懐かしい話です。

因みにハートマンの十八番といえば、”My One and Only Love”です。これは63年の吹き込みです。

 

https://youtu.be/cT1YTkl0-NY

こんなに凄い低音の魅力歌手が60歳で死んでしまうのです。もったいないと思いませんか?

 ”Nobody Home”という歌があります。Loonis McGlohonが書いた歌ですが、ハートマンが死ぬ3年前、1980年にレコーディングしています。聞いたことが無い人が殆どだと思います。みんなの耳に届くまで歌い続けていないのです。


Loonis McGlohon(1921-2002)

テレビ番組でLoonis McGlohon Trioのバック演奏で歌っているビデオを見つけました。何とも貴重なビデオです。この歌が入っているLPはOnce in Every Life(1981年発売)というアルバムの1曲ですが。Clint Eastwoodのお気に入りのレコードだったそうです。レコードの歌よりもテレビのライブ版、それも作詞・作曲者自身のピアノ伴奏で歌うのですから100倍素晴らしいです。

テレビの時間の関係でしょう。1コーラスだけ歌ってお終いです。その素晴らしいJohnny HartmanとLoonis McGlohon Trioの”Nobody Home”です。

https://youtu.be/EshUkSBKw6k

ばかなアナウンサーが”Nobody's Home”、”Nobody's Home”と言うので、ハートマンは敢て間違いを指摘はせずに、せせら笑い。普通なら歌のタイトルを間違えられたら直します。

タイトルは”NOBODY HOME(無人の我が家)”です。ビデオを先ず開始してから、次に歌詞をクリックして見ながら聴いてください。

情景が浮かんできませんか? Loonisはノースカロライナ出身で、「故郷の我が家」を歌にしたものです。だから心に迫ってくるのです。

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 もう1人、大好きなバス歌手ポール・ロブスンがいます。何十年か前、サンフランシスコだったかロサンゼルスだったかで買って来た絵葉書が残っていました。いや、ニューヨークです。


Paul Robeson(1898-1976)

1927年のJerome Kern(1885-1945)とOscar Hammerstein II(1895-1960)によるブロードウェイ・ミュージカル「ショー・ボート」はミシシッピを上下して河岸の街々にショーをみせる一座のお話です。 この一座の座長の娘が、いんちき賭博師に恋をするというのが主題なのですが、黒人女と白人男の南部の法律では許されない恋も描きます。


Jerome Kern and Oscar HammersteinU

1927年、最初の主演をしたのはアメリカを代表する黒人バス歌手、ポール・ロブスンです。彼の歌を学生時代に聴いて震えるほど感動したものです。

"Ol' Man River"をお聴きください。

ポール・ロブスンは人種偏見と闘い、

"The artist must elect to fight for freedom or for slavery. I have made my choice. I had no alternative."

という力強い言葉を残しています。

 スコットランド民謡に"Loch Lomond"という歌があります。1900年代初期の歌ですから多くの人が唄ってきましたが、誰よりもポール・ロブスンの歌が私の胸に響きます。

2002年7月9日、ついにLoch Lomondまで行って見てきました。スコットランドでは湖のことをLoch(ロッホ)というのです。グラスゴーから北に上ったところにある大きな湖でした。写真の正面に見えている島の手前まで遊覧船がめぐっています。

自分の好きな歌に唄われた土地を見てくるというのは、一入の感動を味わうことになります。当初、変ななまりの英語と思っていたのですが、ポール・ロブスンはスコティシュで唄っていたのです。


Loch Lomond, 2002/7/9

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(2020/3/7)


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