Editor's note 2019/10

つい先日、4半世紀前のWordファイルが出て来ました。何かの原稿の付録にでもと書いてあったものです。見つけてビックリ!すべて忘却の彼方ですが、面白いので紹介します。

かつて、Carnegie Melon大学の連中が人工知能の研究の題材に使っていたゲームです。こんな「お遊び」を研究の材料にする研究者がいるなんていいでしょ?

紙に左図のように 6個の点を描きます。
ゲームは2人でやります。そのルールは、

先手か後手をじゃんけんで決めて、交互に任意の2点を鉛筆で線で結んでいきます。
一度結んだところは使えなくなります。
自分の引いた線で三角形が出来てしまったら「負け」になります。ただし、線の交差して出来る三角形はそれに当たりません。ここでいう三角形とは、各頂点が6個の点のいずれかになっていなければならないということです。

さあ、やってごらんなさい。

簡単なゲームだと思うでしょう。こんなゲームが研究の対象になるなんて不思議に思うでしょう。われわれは、こんなことに関心を持ちます。

このゲームは先手必勝なのか後手必勝なのか?

このゲームは必ず勝負がつくのか?

必勝法はあるのか?あるとすればそれはどんなものか?

などです。みなさん、どう思います?

これでゲームというものの認識が改まったのではありませんか。実際、引くことの出来る線はたったの15本ですから、このゲームは最大15手で終わるわけです。囲碁や将棋とくらべれば赤ちゃんみたいなものです。が、15本の線をどういう順番で描いていくかは、

     15!/6= 2179億4572万8000 通り

もあるのです。これは、コンピュータで調べようと思っても気の遠くなるような時間がかかりそうですね。

1秒に100通りの結果を調べ上げるプログラムを作ったとします。すべてのケースを調べるのに69年かかります。骨の折れる問題だということがわかります。

てなわけで、当時は、このゲームはまだ完全には解かれていませんでした。このゲームに強いプログラムを作成することが人工知能の研究としてのテーマだったのです。

情報処理の分野では人工知能の研究から発展して知識工学とか生体情報工学という分野の研究が進んできました。つまり、人の脳の中での情報処理の仕組みをコンピュータの中でどれだけ実現できるかという研究です。

わたしは、ずぼらな人間ですから「人間は人間、機械は機械」と割り切って呑気に生きたいと思っていました。もちろん、機械は人間に出来ないことをたくさんやってのけますから、その能力は使いたいのですが、機械に「シナトラのように唄ってごらん」という挑戦はしたくないのです。

分かります?

(2019/10/7)


後記 その後、この問題が解決したのかどうか、多分、どこかで研究発表がされたか、学会誌などに書かれたのかも知れません。一体、どうなったんでしょう。ご存知の方がいらっしゃったら、教えてください。(かっぱ)

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