Editor's note 2016/8

8月6日で猛暑日が7日間続きました。編集部主幹はぐったり、ゲンナリで「夏休みにして〜」とメールが来ました。やむを得ず、今月はカッパからげて三度笠で一人旅です。

って去年書いたの憶えてますか?ついに「夏休み」は小笹主幹の年中行事になりました。何処かの貯水池と違って、幸い、かっぱのお皿の水は乾かないようです。
 

  つも訃報ばかりこのコラムで毎月訃報ばかり書き続けているので、今月は長生きしている現在生存進行形の人を紹介しよう。90歳代の4人である。8月の盛夏だけど千歳飴代わりに・・・

 生きお婆ちゃん若い人には通じない話かもしれませんが、「ハロー・ドーリー」という1964年のブロードウェイ・ミュージカルがあります。

主題歌はもちろん”Hello, Dolly!”です。大体の人は、その翌年、ルイ・アームストロングが歌ったのを聴いたことでしょう。かっぱもサッチモで覚えました。その後、原作のミュージカルの話を読んで、ドーリーは仲人業のおばさんだと知ることになります。

このミュージカルの主演はキャロル・チャニング(Carol Channing)というミュージカル女優でした。


Carol Channing(1921-2019), 2014

今年の1月に95歳の誕生日を迎えたというニュースがネットに出ました。カッパは驚きました。まさか生きているとは思いもしていません。(2019/1/15大往生97歳)

Jon Hendricks(1921-2017),近影

 生き爺ちゃん日吉に「かまぼこ校舎」が残っていた1959年にLambert Hendricks & Rossという超モダン・ヴォーカルグループがDown Beat誌で紹介された。

見出しが”The Hottest New Group in Jazz”だ。

このLPレコードだ。懐かしい!

「モダン」なんて一言で片付くようなコーラスではなかった。3声なのだが普通のアレンジではない。そもそも普通の歌じゃない。インストの激しい演奏のアレンジ曲にJon Hendricksが舌も回らない猛烈に言葉の詰まった歌詞をつけている。1950年代にはジャズ・ヴォーカルの中にこのようなVocaleseと呼ばれるジャンルが生まれていた。”Mornin'”という代表曲がラジオから流れてきたものだった。

この3人はVocaleseのコーラスをやるのだ。だから3倍凄い。

一言でいうと、カッパがビックリしてひっくり返ったコーラスなのですよ。しかし、リーダーのランバートが1966年に高速道路で故障した車を助けようと外に出たところを後続車にはねられ即死して、このグループは蘇ることはなかった。後にマントラ(Manhattan Transfer)が有名になったが、そのジャージーさはLHRに勝る人もグループも知らない。敢えて言えば、ルイ・アームストロングしか名前が出ない。

しかし、ジョン・ヘンドリックスは長生きし現在も健在で歌っているだけでなく、2013年には来日もした。今、名の知れた男性ジャズミュージシャンでは最年長になった。この人は多分100歳まで生きるのではなかろうかと思う。

でも、昨年、56年連れ添った恋女房を失いボケも進んだ。娘が同居して介護しているのだそうだ。(2017/11/22死去96歳)


Vera Lynn(1917- ), 2014

 っと長生きのお婆ちゃんヴェラ・リン(Vera Lynn)は1917年3月20日ロンドン生まれのポピュラー歌手・女優で今年99歳になりました。

ヴェラとその代表曲”We'll Meet Again”をこよなく愛するのは、我がオージーサンズのメンバーの清田です。彼が大勢集まるパーティなどのクロージングに「みんなで歌おうよ」と私に何度となく提案してきました。

”We'll Meet Again”は涙の出るほどいい歌なのですが、実際に歌ったことはまだありません。私が首を縦に振らないからです。

第2次世界大戦中、イギリス軍が戦っているエジプト、インド、ビルマの戦地に慰問に出かけました。彼女は「イギリス軍の恋人」と呼ばれるようになったということです。そこで必ず歌うのが”We'll Meet Again”です。彼女が歌って聞かせるだけでなく兵士らと大合唱になるのです。

これを歌って最前線に赴き、死んでいったイギリス兵がどれだけいたことか分かりません。

彼女は1959年に大英帝国勲章OBE(勲4等)、1975年にはDBE(勲2等)を授与されました。激動の20世紀を母国イギリスのために生き抜いた偉大な歌手です。

さて、1964年のイギリス/アメリカ映画「博士の異常な愛情(Dr. Strangelove)」がありました。

米ソ冷戦時代、一人の将軍の狂気から水爆合戦が起きてしまうという最悪の映画ですが、最後に地球上に次々と水爆が爆発するシーンのバックに流れるのが、Vera Lynnの”We'll Meet Again”でした。どういう意味かは映画を見れば分かりますが、何とも馬鹿げたストーリーで、地上の放射能が半減する100年後に「また会いましょう」と歌っているのです。一握りの人間が地下のシェルターで生き延びようというのです。詳しく知りたい方はDVDでも見てご覧なさい。

これもこの歌を敢えて歌おうとしないもう1つの拘りでもあります。

97歳の誕生日を記念してNew Albumnをリリースするという話がありました。確認は取れていません。
 


Tony Bennett(1926- )

 日前に90になった元気なオジイサンはトニー・ベネットです。老いてますます盛んです。2013年秋にも東京JAZZで来日しました。

限りなく歌うようです。

上の3人よりうんと若いのですが、かろうじて大正15年8月生まれ、「かっぱが書く名前は知らない人ばかり」と言われないように、おなじみの名前を一人だけ入れておきました。

(2016/8/7・かっぱ)


編集後記 今月は訃報が無いようにと祈っていたのですが、あの大橋巨泉が7月12日に亡くなりました。もともとはジャズ評論家だったのですが、11PMの司会者となって以降のテレビでは偉大な影響力を発揮しました。82歳でした。その5日前には、永六輔が83歳で亡くなったばかりです。2人とも早稲田大学中退の親友です。

3人の歌を聴いてみたい方は、こちらにあります。
Carol Chaning   ⇒Jon Hendricks   ⇒Vera Lynn 


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