映画”The
Terminal”:スピルバーグ監督が2004年に”The
Terminal”(空港ターミナル)という変わった映画を制作した。主演はトム・ハンクスのコメディ映画だが、この夏に知り合いのベーシストが「感動もののDVDを見ますか」といって貸してくれた。
その映画の中でこの写真が出てきたので「えーっ!」とびっくり仰天してしまった。私にとっては目に焼き付いているジャズ・ポートレートだったからである。
ド・ゴール空港で18年暮らしたナセリというイラン難民が実在する話が報じられたことがあるが、この映画のヒントとなっている。スピルバーグは、この一枚の写真とナセリの話を重ねて映画を作ってしまったのだ。
話の筋はこうである。旧ソ連圏のある国にジャズの好きな男がいた。彼はこの写真が掲載された雑誌を手に入れたのだろう。ここに写っているジャズメンのサインを全部集めようと奇想天外なことを思いついたのだ。
彼はアメリカに手紙を書き続けた。そして40年間に56人のサインを集め、あと一人で全員のサインがそろうという時にこの世を去ってしまった。もう一人とは、ベニー・ゴルソンというかつてジャズ・メッセンジャースのメンバーでもあったテナーサックスの名手である。最上段3人の向かって左にいる。
この親父の遺志を息子ビクターが継いで、ベニー・ゴルソンのサインをもらおうとニューヨークに向かった。ところがNY国際空港に着くまでの間に、母国でクーデターが起き無政府状態となり、彼のパスポートもビザも無効となってしまった。入国審査で許可が出ない。入管の責任者は帰国を促すが、ビクターは目的を遂げるまで帰るわけにはいかない。
彼はピーナッツの缶のようなものを大事に持っているのだが「Jazzの缶詰」だという。親父の集めたサインがこの缶の中にしまってあるのだった。宝物だ!Esquireの写真のページも一緒に入っていた。
ビクターは自国のクーデターが収まり正常化するのを待とうと空港ロビーで大工仕事のバイトをしながら暮らし始める。使用していない67番ゲートが彼のネグラだ。入管の係員や空港の労働者達はスパイじゃないかと怪しんでいたが人の良さを知ってビクターの味方となっていた。ついにある日彼らの誘導でターミナルから出て、ベニー・ゴルソンがライブ出演中のホテルに駆けつける。
本物のベニー・ゴルソンがこの映画に出ていたのだ。無事サインをもらうことになる。目的を果たしたのだ。タクシーで空港に向かう。
「さあ、家に帰ろう」