去年のちょうど今頃、楽友三田会総会・新年会でこんな話がでました。
先輩 「オイ、いつも冒頭にやる『黙祷』、あれ止めさせろよ!」
私 「お気もちはわかりますがねー、そんなこといえませんよ」
先輩 「・・・・・・」。
たったこれだけの会話ですが、周囲の人たちも困った顔をしていました。私も内心<去年の物故者を悼み、黙祷を捧げる気もちはよく分かる。だが、楽友会としては芸がねーなー>と毎年思っていました。が、代案がないから慣例に従わざるをえず、黙っていたのです。
これが教会だともっとスマートです。ある教会では毎年11月2日の死者を記念するミサで、司祭が逝去者の名を告げると会衆が、短いけれどとても美しいグレゴリオ聖歌で応唱していました。キリスト教はやはり「歌う宗教」です。けれど楽友会のレパートリーにはそれに相当する曲がありません。レクィエムは何曲も歌いましたが、ふさわしい小曲がないのです。
そんな時カッパが上記グループのことを書き、その歌っている実景をYouTubeで見せてくれました。そのURLを開いたとたんに私は「これだ!」と叫びました。<先輩も皆も、これなら共感できる!>と思ったのです。
曲は“Forever Young”というBob
Dylanの渋い名曲。それを平均80歳というアメリカのお爺さんお婆さんたちが、地元の刑務所の慰問ライブで歌います。当日の朝、病気で死んでしまった仲間に捧げるといって歌いだします。悲しみを乗り越え、深い思いをこめて亡き仲間を偲びつつ合唱しているのです。その人たち、そしてそれに聴きいっている受刑者たちの何ともいえない、あたたかな表情。そしてしみじみとした心の交流!
すぐにカッパに楽友会用アレンジを頼みました。が、いつしか春がきて、夏が過ぎ・・・やがて忘れてしまいました。ところが突然、1年たった先月の25日に譜とカラオケが送られてきたのです。彼には様々な思いが交錯し、つい延びのびになってしまったようです。けれど、もう今年の新年会には間に合いません。
<どうしようかな>と考えていたら、これまた偶然、1月28日付の朝日新聞夕刊に「ヤング@ハート」に関する記事が載りました。何と彼ら34人が初来日して3月18日から10日間、神奈川・東京・兵庫・愛知の各地を経巡って6回公演するというのです。すでに欧州や豪州、カナダでも公演を成功させているとのことです。驚きました。

日本で“Forever
Young”を歌うかどうかは分かりませんが、歌うならぜひ聞いてみたいと思います。決してうまい合唱とはいえません。が、老いてなお人々の共感を呼ぶその歌心、そして何よりも単にしめやかに故人を追悼するだけではなく、故人の想い出とともに「いつまでも若く」歌える喜びをひしひしと感じさせられるところに、何ともいえない共鳴を感じます。
ふと「四十、五十は洟垂(はなた)れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ」という渋沢栄一の名句が頭をよぎりました。それで<そうだ!“Forever
Young”は我ら「働き盛り」のOSF合唱団にこそふさわしい>と思うに至りました。カッパも納得、すぐに男声合唱版を送ってくれました。早速レパートリーに加えましょう。ちなみにOSFは男だけですが平均71歳です。
心も軽く気も軽く、久しぶりに雪景色の美しい公園を歩いてみたら、枯れ木にたくさんの雀がたむろし、ピーチク・パーチク楽しげに囀(さえず)っていました。(2月5日/オザサ)
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