Editor's note 2009/7
「歌は世につれ 世は歌につれ」といいますが、必ずしもそうではありません。世代を超えて歌い継がれている歌も、たくさんあります。

一昨日の日曜日。2歳になったばかりの孫が、遊びに来ました。まだことばもあまりよくはしゃべれません。でも爺は嬉しくてたまりません。重くなりましたが、ついつい抱っこしてしまいます。そしていつものようにベランダに出て、すぐ近くに見える電車や飛行機や船や自動車やバイクなどを一緒に指さして眺めながら、片言の説明を聞くのです。会うたびに語彙が増えてくるのが毎月の楽しみです。

フト、目の前を鳩が二羽飛んで行きました。私はそれを見て♪ポ、ポ、ポー、ハト、ポ、ポー♪と歌いました。そうしたら、なんとその子が一緒に歌いだしたのです。一瞬耳を疑いましたが、本当にハッキリした歌詞をつけて歌っているのです。つづけて「デンデン虫」とか「犬のおまわりさんとか」とか「アリさんとアリさんがゴッツンコ」なども合唱してくれました。

親、つまり息子夫婦が教えたのかと思いましたらそうではなく、保育園で覚えてくるのだそうです。歌いながら手でハトの羽根の形を作ったり、カタツムリの角や槍の形まで上手に真似たりしながら歌いまわるのだそうです。驚きました。人間は会話より先に、歌や振付を覚えることができるのですねー。しかもその歌を70歳も年の違う祖父母の年代と共有している!

つい爺バカぶりを披露してしまいましたが、こうして幾世代にもわたって歌うことのできる童謡を作ってくれた祖先の人々、それを子供たちに伝え教える人々、そしてそれを受けて歌い喜ぶ子供たちの群れがいることを知って、感動を新たにした次第です。

ああ、どうかこの平和で喜びあふれる世界がどこまでも、いつまでも広がり続けていってくれますように。それが今年の七夕の願いとなりました。(7月7日/オザサ)

あっという間の1年時の過ぎるのは、どこの国でも早いと感じるものらしいです。歌にまで唄われています。昔は、時の過ぎるのが早いのは、年寄りの特許でした。それが、今では若者までが「早い」といいます。それだけ世の中のあらゆるものの密度がどんどん高くなっていくからなのでしょうか。確か、昔の新聞のページ数は現在の半分か3分の1だったような気がします。

テレビのチャンネル数も何十倍になりました。ラジオのチャンネルはそれほどではありませんが、ローカルなFM局は各都市にあるといっても過言ではありません。それに、インターネットという怪物が現れてしまいました。「楽友」もこのメディアの上に乗っかっているのです。

これだけの情報がパラレルに送り込まれてくるのです。われわれに降りかかってくる情報量は昔の何百倍になっているのかもしれません。したがって、若者でさえ時が速く過ぎると感じるのだと思います。

この1年に小笹主幹と交換したメールは1000通をはるかに超える数字(勘定しかけましたが諦めました)になります。メールという道具に、携帯電話と続きます。われわれは、こんなに情報が必要なのでしょうか。

現代人は情報の洪水に翻弄されながら日々を過ごしているのです。

ハモリの実験ピタゴラスPythagoras(BC 580-BC500?)は音の協和性を数学的に探求しました。ピタゴラス学派は簡単な弦楽器で面白いことを発見しました。

一弦の箏を作り、駒の位置を左右の弦の長さの比が2:3になるところにずらして、左右の弦を同時に弾くと協和した2つの音が聞こえてきます。

ピタゴラスはこの実験から、弦の長さの比が簡単な整数比となるときに「2つの音の響きが快い」ことを発見したのです。この2つの音は、「ド」と「ソ」の音程です。理想的な完全5度音程です。念のために平均律で調律したピアノでは試すことができません。

1:1 では同じ音が出ます。これはユニゾンで最も協和します。
1:2 ではオクターブとなります。これも良く協和します。
2:3 では完全5度となります。ドとソです。
3:4 では完全4度です。ドとファです。
4:5 では長3度です。ドとミです。
5:6 では短3度です。ドとミbです。

ピタゴラス音律と狼音さて、この快い5度音程進行で、オクターブを12鍵で量子化された楽器、すなわちピアノを調律することを考えます。言っておきますが、ピタゴラスの時代には鍵盤楽器などはないのです。

弦楽器で、張力を一定にしたまま、弦の長さを2分の1にすると、周波数は2倍になります。これはオクターブ音程です。長さを3分の2にすると、周波数は3/2倍になります。逆数関係になります。これは5度音程です。

Eb1から調律をはじめて5度間隔で上昇し調律します。以下の音名は岡忠さんに習った「ドイツ式音名」ではなくアメリカ式ですが、ご容赦を・・・

1回の5度音程進行では周波数は元の音の周波数の3/2倍になります。

11回この操作を繰り返すと、以下の12音が生成されます。

Eb1−Bb1−F2−C3−G3−D4−A4−E5−B5−F#6−C#7−G#7

残りの音はオクターブの調律ですべてのピアノの鍵盤の調律が出来ます。ピタゴラス音律によるピアノの調律です。

@ C長調の音階:C−D−E−F−G−A−B−C
A D長調の音階:D−E−F#−G−A−B−C#−D
B F長調の音階:F−G−A−Bb−C−D−E−F
C G長調の音階:G−A−B−C−D−E−F#−G
D A長調の音階:A−B−C#−D−E−F#−G#−A
E Bb長調の音階:Bb−C−D−Eb−F−G−A−Bb
ですから、C、D、F、G、A、Bbをキーとする音階(ド〜シの7音)を構成する音はすべて生成された12音の中に含まれています。

しかし、Eb長調の音階:Eb−F−G−Ab−Bb−C−D−Eb

ですから、上記の12音にはAbがありません。G#はありますから、これを使うと困ったことが起こります。ピタゴラス調律ではAb=G#ではないのです。約1/8音程度G#の方が高いのです。

その説明は、以下の通りです。

G#7から5度上の音を調律します。D#8となります。出発のEbから7オクターブの音程があります。

Eb1を基音として12回繰り返すとD#8が得られますが、その周波数の比は(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)×(3/2)=(3/2)の12乗となります。

ここから7オクターブ下がってみます。オクターブ下がるのは周波数比=1/2とすることですから、7オクターブ下がると周波数は(1/2)の7乗となります。この計算をまとめて書くと、

D#から7オクターブ下がった音はEbと一致しないのです。周波数比が1であれば、同じ音なのですが少々高めになります。およそ1/8音の狂いがあります。

これで、EbとG#が気持ち悪い音程になってしまうのです。Eb長調のファの音であるAbがG#で代用されているために、ファの音だけが調子はずれになるのです。これをドイツでは「狼音」と呼んできわめて不快な音程とされています。

では、5度の上がりを何回か繰り返して、オクターブで何回か下がることによって、元の音に戻ることができるでしょうか。これはできません。5度の繰り返しを何回繰り返しても、基音の整数倍の周波数の音は出てこないのです。なぜだか知りたいですか?n回5度上昇し、m回オクターブ下降してもとの音に戻るということは周波数比が1になるということでした。式で表すと、

3のn乗は奇数になります。2の(m+n)乗は偶数です。したがって、上の等式を満足する整数m、nは存在し得ないのです。

しかし、n=53、m=31とすると、

かなり近似の程度がよくなることがわかります。これはオクターブに53個の鍵盤を用意しろということになりますから、そんなピアノは演奏できる代物ではありません。

このように、ピタゴラス音律で調律されたピアノは、移調や転調に弱いのです。現在では、平均律が一般であります。協和性を多少犠牲にして、移調や転調に対応できる有利さを一義的に考えたものです。

楽友の皆さん、これで平均律で調律されたピアノから音をとることは問題であることがわかるでしょう。世の中にはピアノでは出せない正しい音程で歌える人がいます。そういう正しい音程の人から口移しで自分のパートを習うとハモルのですよ。皆さんは譜面を読みながら唄う人種です。1800年代のバーバーショッパーは、上手な人が各パートを歌って聞かせて、耳から教えました。(2009/7/7・かっぱ)