● 先月、野本陽一君(7期)がBBSで、塾法学部政治学科の片山杜秀准教授が著した「音盤考現学」と「音盤博物誌」の2書(共にアルテスパブリッシング/08年)について触れておられたので、早速読んでみました。さすが「吉田秀和賞」と「サントリー学芸賞」をW受賞しただけあって読みやすく、読みがいのある、すばらしい著書でした。著者は大学の他に、塾女子校でも教鞭をとっておられるようですが、そうした本業の他に、よくもまぁこれほど該博な知識を身につけられたものと感心しました。目のつけどころが、並みの音楽学者とは違います。63年生まれということは、まだ40歳代半ばでしょう、先が楽しみです。
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▼ ついでに、最近読んで感銘を受けた良書4冊をご紹介します。大前研一(31〜)の書は昔からかなり読んでいますが、「あなたは『低IQ社会』の一員に甘んじていないか」と問う「『知の衰退』からいかに脱出するか?(光文社/09年1月)」は、現在の国際情勢と日本の現状を知る上でとても興味深いものでした。特に、現代日本の病巣を抉ると共に、著者特有の、国際的視野に立った政策提言が痛快です。しかし、その提言が実現する可能性は0に近い。何しろ日本は、「低IQ」の政治家と官僚、その他さまざまな既得権者が牛耳っており、マス・メディアも愚民化政策のお先棒を担いでいるだけのようですから・・・。
そこで、目覚めた個人は「考える人」として「英語」「金融リテラシー」「ITを駆使した論理思考と問題解決法」を武器として、限りなくボーダーレス化した世界に飛び出すしかありません。もちろん場所は問いません。「ウェブ2.0」の今日なら、居ながらにして「バカの壁」を超えることもできるのです。
▼ 原丈人(はらじょうじ/52〜)はその見本みたいな人です。塾法学部を出て中米に飛び、遺跡発掘に従事したという変人です。というよりも、その後スタンフォード大工学部に転じ修士となり、国連フェローとなり、起業家として欧米を股にかけた成功者になっているので、異才の人というべきでしょう。
その、最先端技術の動向を見据えた先見性と、国際的視野に立ったノーベル平和賞級の数々の有益な事業展開に目をみはります。しかし、この人の真価は、自分の生まれ育った母国を忘れない、スタンスの確かさにあります。
それが「21世紀の国富論(平凡社/07年6月)」、「日本興国論―米国型経営を超えて―(文芸春秋/07年11月号)」および糸井重里氏とのWeb上の対談http://www.1101.com/hara/2007-11-19.htmlを読むと明らかになります。
特に、日本が従来のアメリカ追随型の経済体制を改め、来るべき「ユビキタス・ネット社会」時代に備えてPUC(Pervasive
Ubiquitous Communication)関連テクノロジーで国力を高めよ、という提案が目をひきます。
これこそ、確かに、日本の向かうべき進路と思えるのですが、政府も官僚もマスコミも一向に反応していません。総務省が遅まきながらこのテーマに関する「政策懇談会」を開いていますが、そのメンバーにこの願ってもない真の国際人の名はありません。また、「グローバル恐慌」に直面している今こそ読まれるべきこれ等の本が、なぜか本屋の店頭には見当たりません。
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