記念文集(定演プログラム)

第3回定期演奏会プログラムから

山葉ホール(54年11月28日)


第3回発表会を迎えて

 

楠田 久泰(2期)


一昨年6月に発足した私達楽友会も、こゝにとにかく第3回の発表会を開くことになりました。この2年半の間、もとより必ずしも全く順調に発展して来たとは云えないとしても、ようやく短いながら振返るべき過去をもち得たということは、私達にとつて、決して小さいことではないように思われます。

自分達で音業を楽しむという同じ目的をもって集った私達であつても、私逹自体が、さゝやかな社会であり又もう一つ大きな基盤としての社会に於いて、好もうと好まざると一つの要素として存在している以上、今後のより健全な発展の為の意欲と反省のよりどころとして、自分達の歴史を大切にしていかなければならないことは、いうまでもありません。そこから、吸収し得る限りのものを吸収して、初めて未来が可能性をもったものとなり得るのですし、又私達の目的も、それによつてより明確で、具体的なものとなっていくのだと思います。
 


第3回発表会プログラム
表紙デザインは、会誌「楽友」でも度々装丁やイラスト作成でご助力くださった、塾校・美術科の毛利武彦先生によるものです。

今後の私達の為すべきことの一つは、他の多くの合唱国とより親密になることだと思います。我々日本人の音楽を創っていこうとする私達の、そして我国楽壇のはるかな理想の為に、多くのアマチュア合唱団相互の密接な協力が大きな力となることは充分に期待されてよいことだと思います。

勿論一方に於いて、私達一人々々があらゆる意味でのより高い知性をもつことも、この理想の為に欠くことのできないことですし、又それ以前に我々の一つの大きな目的でもあるはずです。その意味でも今回の発表会でフランクのミサ・ソレムニスという本邦初演にも等しい大曲をとりあげたことを、充分に意味あらしめたいと思つて居ります。

第3回発表会・於:山葉ホール(54年11月28日)


FEST