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「現在の楽友会」の問題

池内 正和(8期・幹事長)


楽友会は歴史が浅いといわれながらも、昨年第10回定期演奏会の記念すべき行事を終え、諸君の気持ちもホッと一息という感が強いのではあるまいか。今日の我々に課せられた問題は、これまでに成長した楽友会をいかに発展させるかを考えると共に、現在の楽友会に内在する諸問題の解決にあるといえよう。

第一の問題について述べよう。今日の楽友会は、演奏会の観客を見ても分かるように、塾内ですらそれほど名の通った会とはいえない。一層の発展のためには、塾内外へのアッピールが必要となる。あらゆる機会を掴んで数多くの演奏をして、広く楽友会の名を知ってもらうことである。しかし、会員の活動の限度を越し、練習も十分に行えないようでは、この試みは何の成果も現わさない。この点は慎重に考えねばなるまい。

第二の問題は、もっと根本的な組織上の問題である。これは最も重要な問題でありながら、ついなおざりにされる傾向がある。楽友会には正式な規約がないが、誰もが認めているように、男子高校、女子高校及び大学という、7学年より成る合唱団である。しかし現在、夏季合宿を含めた定期演奏会の為の活動だけが共通であり、他の多くの活動―新入生の受け入れに始まって日吉祭、三田祭、3校合唱サークルの春の演奏旅行等―は、高校と大学が別々になっている。そこには練習時間、試験時期のズレ等の動かし難い原因も働いているのである。活動のこうした傾向は年々強まり、おそらく会員諸君の意識は、ともすれば「小さな楽友会」に傾きがちなのではあるまいか。現にその「小さな楽友会」にのみ参加している会員もかなり見られるのである。そして、もっと不思議な事には、「小さな楽友会」の一方、―大学楽友会―は組織も存在しないにも拘らず活動を続けている。この「小さな楽友会」と「大きな楽友会」という二つの楽友会の混乱が、例えば新入生の問題等に関しても悪い影響を与えているのではないだろうか。

ここで「大きな楽友会」の長所―一言でいえば7年間の厚み―については論じる迄もあるまい。これこそが過去10年間の楽友会を支えてきた柱であり、今後の楽友会の発展への原動力となり続けるべきものであると考えるからである。
今日の我々の課題は、この二つの楽友会をいかに合理的に整理統合し、「大きな楽友会」にとっても「小さな楽友会」にとってもプラスとなるような組織を確立するかということであり、懸案の規約問題の核心も、この点に尽きるのではないだろうか。

明日の楽友会を思うとき、以上の問題はどこまでもつきまとうガンのように思われる。そしてともすれば当面の活動に追われて忘れがちな問題である。しかし、今直ぐにでも着手し、我々の手で十分な検討を加え、1日も早く「あるべき楽友会」の姿を確立しようではないか。決して早すぎる事ではない。

(「楽友」第19号/62年4月発行より)


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