記念資料集有馬語録)

発表会によせて

有馬 大五郎(楽友会会長)

随想 岡田 忠彦

有馬先生がご病気の為、2回程先生から拝聴したお話により、先生のご感想を代筆してくれるようにとのことで、小生誠に困惑していた処、その原稿を、特に、ご多忙でその上ご病身にも拘らずお送り下さいましたので、小生が如きがそれをアレンジするよりも、原文のエキスのまま掲載させて頂く方がより賢明と信じ、一応お引き受けはしましたが、原文のまま掲載させて頂くこととしました。

演奏についての感想となりますと、あくまでも比較的ですが、昨年より余程良い意味でも、悪い意味でも後に残るものがありました。割合に印象があったという訳です。皆さんや、吾々の目指す航路に船出したという感じです。無限に続くべき航海です。協力一致して進みませう。

小生自身、具体的感想も種々ありますが、演奏はそれ自身が全てですから、何も云う(云訳を)余地は、更にありません。自分でも具体的に「あそこはこう」「ここはこうすればよかった」と思う処が多々ありますが、更に多くの人の意見を聞かせて頂いて、反省の材料をより豊富にし、今後に生かしたいと思います。云うより聞いて、より深い自己批判をしたいというわけです。被告人ですから。

フォーレの宗教的芸術作品を、未熟な吾々がケガしたことを恐るるのみです。作品を使用させて頂き、私個人深い感謝を懐いております。修業の途上にある学徒ですからお許し願えれば幸いと存じます。尤もその感謝のマトが合っているかどうか、甚だ不安ですが、マトを合わせるように反省に努力することが、今後に残された使命であり、私の仕事の一つと信じます。

尚当日、ご多忙の処お出かけ下さいました有馬先生、川島先生(編注:塾監局長)、佐々木(編注:女子高教諭・愛称ニヤチャン)の諸先生を始め、ご家族の皆さんに厚く御礼申し上げます。

    

1.2回目の演奏会で、吃驚するほど磨きがかかっていることを発見した。

2.日本人の合唱に欠けているものは、声量声質のバランスであるが、何れもオルガニゼーションと不離なものであるから、合唱団員の皆さんは、よい演奏をするということと、オルガニゼーションの苦労を共にするということに同じ重要性を自覚して、団結していって頂きたい。

3.独唱のお二人に申上げるが、発声の研究をする最もよい場所は、合唱団の声が響いているところで、その中に自分の声が如何に融け合うかを見つめることより以上によい発声の研究はない。

納得がいってから始めて声量のことも考えるべきであります。これは日本人が一番おろそかにしていることです。独唱者は合唱団から出るので、のど自慢が集まって合唱団はできません。

4.この合唱団は声楽を志した人々の集まりではないのですから、声楽家として社会人として、生存競争の準備をする必要もなければ、他に張り合うこともいらぬのである。理想的、合理的な合唱音楽の研究成果を世に示して、日本文化向上に貢献して頂きたい。

「楽友」新・第2回発表会特集号(53年12月)


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