記念資料集有馬語録)

楽友会に望む

有馬大五郎(初代会長)


伝統の深いワグネル・ソサィェティを先駆者にもつ楽友会の方々に望みたいことは、合唱音楽界のスタイルや一般社会通念に流れないことです。

大曲、難曲を征服することも結構です。職業団体と同様或はそれ以上の技術を目指して練習することも結構です。が併し合唱のよろこびはその中にあって自分の声を聴き、人間の呼吸即ち霊の妙味を感じることでありまして、それが聴衆の心につながって、聴衆との距離をグングン狭めて行く瞬間、音楽する人間、それを聴く人間のみが体験し得る雰囲気をつくるところにあります。

美しく印刷されたプログラムの中にある解説など第二義的なものでしよう。標題にこだわって、歌声にあらざる忍び声、泣き声が聴かされる陰気な日本の合唱音楽界を、スッキリしたものにしてやろうと云う意気込みこそ、この「若き血、楽友会」に課せられた使命ではありますまいか。

第5回定期演奏会プログラム:日本青年館ホール(56年12月22日)


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