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特集「係の言い分」

百聞は一見にしかず

 

須藤 武美(9期)


“Sancta Maria…ora pro nobis…Amen.”・・・・・「今日の練習はこれで終わります。ご苦労さまでした」。うっとりした気持でいっぱいになる、ト、その瞬間、こわい顔つきをした練習係が前へ出る。

「練習はこれで終わりますが、遅刻する者が非常に多い。これからは絶対に遅れないように」。せっかく味わえたうっとり気分もどこかへ消え去ってしまう。これをいう係の方はなお一層いやな気持であろう。本当にお気の毒様。

このような状態が何回となく繰り返される。しかし一向に変化がみられない。これがまた4月からの練習時にみられる風景かと思うと、今から練習に出るのがいやになる位である。

新入生だって練習が嫌いになり、やめてしまうだろう。「長い間楽友会にいる上級生が練習に遅刻しているのに、よく我々に注意できるものだ」と彼等は感じるに違いない。4月からまた新しい1年間の活動が始まるが、お互いに次のような事に注意していこう。

1)練習時間には絶対に遅刻しないようにする。授業等の都合で、あらかじめ遅刻が分かっている時は、必ず事前に届けを出すなり、口頭で告げておく。そして、例えば5時からの練習と決まっていたら、少なくとも10分前の4時50分までには集合する。なぜなら、机や椅子を片づけなくてはならないからである。また片づけるのは上級生が率先してやってほしい。「私は上級生なんだから」「オレは先輩なんだから」などという気持ちは捨ててほしい。上級生が10分前に来て片づけを始めれば、新入生も自然にそれを真似る。そしてそれが習慣となっていく。5時からの練習は、5時に集合したのではダメだということを、耳からではなく、目から感じさせてあげたい。

2)練習時には赤鉛筆を用意して、指揮者の注意を書きとめておくことを実行する。練習係が新入生にいう前に実行してほしい。そうすれば彼等は、いわれる前に実行することだろう。

3)練習時の私語である。私語により練習時の能率は下がるし道徳的にも悪いことである。休憩時間とのけじめをつけ、お互いに練習時には慎もうではないか。

4)休憩をはさんで次に練習が始まる時の態度である。係が「練習を始めます」といってからも、多くの者はモタモタしていて、実際に始まるまでに1分や2分かかる。もっと機敏に動こうではないか。新入生が「引き締まったクラブだ」、と感じるようにしようではないか。

以上の4点を新入生に耳から教えるのではなく、目から感じさせてあげよう。そうすれば彼等は、矛盾を感じることなく、納得のいく活動が楽しめるようになるのではなかろうか。

「楽友」21号(63年5月)

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