記念資料集Archive)


特集「係の言い分」

若きカイケイの悩み―未納金者に捧ぐ―

 

松本 栄一(6期)


3月○日自宅にて

まったくどう間違ったのか因果な係になったものである。前任者の一挙一動に同情と憐れみとをもって特にクラスが一緒だったために身近で観察していた、この係になるなんて・・・。

 「君は会計だよ」

という幹事長の電話の声が何と冷酷にわが耳に響いたことだろう。よし!それならば今日からMiserになろう!Miserはお金を手に持った瞬間や、金貨の音を聞く瞬間に快感を覚えるそうである。この金貨の音が素晴らしいSymphonyとなって聞こえるように、努力する決心をした。

<哀れなる者を嘲るな。明日は我が身なのだ>

4月○日教室にて

前任者より、会計簿等を受け継ぐ。なんとまあ、支払い義務回避者の多いことか!

 「汝もそうではないか!」

 「シー!」

彼らを相手にこの1年間戦うのか!?と思うと、一瞬背筋が寒くなった。

<ちりも積もれば山となる>

4月△日出店にて

S君は「会費の領収証をくれ」といったが、新入会員の某君は実に嬉しそうに?少なくとも僕にはそう思えたのだが)会費を支払ってくれた。どうかその気持ちを忘れずに!

明日の練習からは強敵が待ちかまえている。今夜は、十分に睡眠をとってそれに臨もう。

<Go for brake!>

5月○日音楽室

部屋に入るや否や某君曰く。

 「この頃少し痩せましたね!」(お世辞のつもりらしい・・・)

 これなどまだ良い方である。雑談でもしようと話しかけると、

 「今日はありません!」

Alas、全くうかうか話もできない状態である。月末ともなればお互いに苦しいことは百も承知ですからね!義務の遂行と人情の板挟みとなった若きカイケイは、日夜涙ぐむのであります。

<弱き者よ 汝の名は会計なり>

6月○日アチコチで

何と近頃は、一度にたくさんお金のいることだろう。フォーレの楽譜、会費、バス旅行、合宿、楽譜バサミ、etc、エトセトラ、etc、・・・誠にご同情申しあげます。

 「ホラ!君がさっき食べた2度目の昼食代で会費が・・・」

<アッ失礼!これは僕のことでした>、しかし、一部の先輩諸兄のように、月給を差し押さえられるような羽目に陥らないよう、ご注意あれ!

<武士は食わねど 高楊枝>

「汝は先程より、年寄りの愚痴の如くだらだらといっているが、結局何をいいたいのだ!?」

<わかってるくせに!>

「楽友」14号(59年8月)

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